「海が聞こえる」(氷室冴子、徳間書店)は、月間アニメージュの連載が、1993年2月に単行本として出版された後、すぐに1993年5月5日にスタジオジブリ制作によるスペシャルアニメがテレビ放送された。私は、1993年4月に京都の大学に進学し、単行本を読んで、おそらくこの放送も観たので、サークルのボックスでうだうたしながら、「「海が聞こえる」の松野君がかわいそうだ、かわいそうだ」とぶつぶつというか半泣きになりながら言い続けていたところ、いつのまにか「松野」というあだ名で呼ばれるようになっていた、という、大変思い入れのある作品である。
「海が聞こえる」で松野君はヒロインの武藤里佳子に、高3の夏ころ振られた後、京都の大学に進学する。それから松野君の親友の杜崎に武藤里佳子をもっていかれる。また、1996年に放映されたドラマ「白線流し」でも長谷部君(柏原崇)は、ヒロインの七倉 園子(酒井美紀)に高3の夏ころ振られた後、京都の大学に進学する。長谷部君も大河内(長瀬智也)という定時制に通う青年に七倉をもっていかれる。これらの3例の共通点をもとに、1993年ころの私の存在論的課題は、まず、「自分ではなくてヤツとなってしまったのは紙一重のタイミング違いによるものであった」という事実認識(誤認でしょ)のもと、ヒロインと松野君や、長谷部君がうまくいくという「世界線(当時にこの用語はなかったので、可能世界とか言っていたような気がする)」と現実世界との分岐点の特徴を抽出するというものであった。
それはともかく、2025年にアニメ版の「海が聞こえる」が劇場でリバイバル上映されるというニュースに接して感じことは、「いやあ、忌まわしき記憶をいまさらほじくり返さんといて、でも、今なら世界線の分岐点がわかるのか?あと、これっておれ以外の誰が見るの?」であった。
そこで、とるものとりあえず上映が始まった7月4日とそれ以降3週間の観客数を「興行収入を見守りたい!」で調べたのが下記である。7月4日だけ単日、それ以降は1週間分のデータとなっている。
海が聞こえる:(独立系を含む)週間上映25分前販売数合計ランキング
これを見ると、この3週間、全国約85館程度で、総計2477回上映され(1日あたり1館あたり平均1.3回程度上演)、総計78,599人(各回平均31.7人)がお金を払って観たらしい。
ちなみに、同時期に話題となっていた「国宝」は下記の通りで、約172万人を動員していた。「海が聞こえる」の動員数は「国宝」の4.5%程度であった。
国宝:(独立系を含む)週間上映25分前販売数合計ランキング
「高校3年で振られて京都の大学に行った同志」が全国に8万人近くいるという事実?は、大変心づよいものであろう(?)。しかしいったい誰がみているのか?
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