2020年10月17日土曜日

SGDs超入門

近年、大学業界では、学内で進む多様な研究を、それが貢献しうるSDGs目標と関連付け外部に可視化する。みたいな話が出始めている。そこで、企業でのSDGs受容の背景を知りたくてファミマで売ってたコンビニ本の「60分でわかる!SDGs超入門(バウンド、技術評論社)」を読んだ。

本書は、簡潔、わかりやすいうえに、最後のいろんな企業における具体例があるおかげで、企業活動にSDGsがどう組み込まれるのかがよくわかる良書である(必要なポイントが押さえられているのかは、この1冊しか読んでないのでよくわからない)。

 SDGsの17目標には、それぞれ具体的なターゲットが設定されている。1.1 (数値目標)とか1.a (実現方法)が決められている。中身を見ると途上国の生活水準向上に関するものが多い。これは、2001年から2015年まで実施された途上国向けのミレニアム開発目標(MDGs)のバージョンナップ版としてSDGsが設定されたという背景を反映している。

一方、企業活動にとってSDGsが重要なのは、

  1. 投資家がSDGsに貢献する企業に投資をしたいと言いだしている。
  2. 消費者がフェアトレードなどを気にし始め、SDGsに貢献するものを買いたいと考え始めそうだ。
  3. このため、サプライチェーンの中から、途上国での児童労働とか森林伐採が絡みそうな、原料やプロセスを一掃したい。

からである。うまくいけば大変良い話である。

一方、投資家は投資の判断材料として、SDGsへの貢献度の定量的な評価、を求めるようになるんじゃないだろうか。すると企業は、SDGsへの貢献度が高く見せたいというインセンティブができる。本書58ページによるとすでに「SDGsウォッシュ」なる言葉も生まれているらしい。現在はあのロゴを何個並べられるかを、競っているようにみえるが、そのうち、各企業の活動が、途上国の生活水準向上のターゲット(数値目標)実現にどれくらい貢献しているのかの数値が求められるようになるだろう。企業のSGDsランキングはもうある

ランキングが出ると、社長さんは自社のランキングをなんとか上げようと考える。すると、変なことが起きやすい。途上国の生活水準向上に向けたとりくみを行った結果、SDGsのランキングが上がるのではなく、SDGsのランキングあげるためのSDGsへの取り組みとなってしまうからだ(大学ランキングがまさしくそうなっている)。

また、企業ランキングは実質的な「途上国の生活水準向上のターゲット(数値目標)実現にどれくらい貢献しているのか」という数値を出すところまでは言っていないようだ。上記のランキングは「各社のESG活動(「環境に配慮している」「地域に貢献している」など)20項目について」を「投資経験者、ビジネスマン、SDGs認知者、専業主婦、若年層などのステークホルダー1万500人」にアンケート調査して決めたらしい(大学ランキングも一部の項目がまさしくそうなっている)。いわゆる口コミである。おそらく各社の経営企画部などには、「SDGsランキング上げろ」などの指示か上からやってきて、それに対して、優秀な幹部候補社員たちが、SDGsとかに興味を持ちそうな意識高い系の人たちに向けたやってますアピールを、いかに手間とリソースをかけずにする方法を寄ってたかって、真剣に検討したとと思われる。いわゆる「ブルシット・ジョブ」ってやつですな。

そうなると、攻略法もすぐ見つかる。手近にできる取り組みとして、たとえは、SGDsを宣伝することを、SGDsの取り組みとしてカウントしていいらしい。なるほど、SGDsラッピング列車が走ったり、雑誌にSDGsの企業広告がでるのは、そういうことか。

一方、「途上国の生活水準向上のターゲット(数値目標)実現にどれくらい貢献しているのか」という実質的な数値(貧困を??名減らすのに相当。。とかでしょうか、生々しいけど)を出す作業が、これまた極めてめんどくさそうな書類仕事と、変な専門職を大量に生み出すのは、見え見えである。SGDsコンサルタントはもういっぱいあるらしい。あとはSGDs評価基準ISOとかができたら完璧。そもそも数値評価の目的が「ランキングを上げる」「投資を受ける」ことにすり替わっていることから、これまた典型的な「ブルシット・ジョブ」ですな。

本書を読んでSDGsについて学んだのは、SDGsが新たな「ブルシット・ジョブ」を生み出す要件を十分に備えている。ということでありました。