2024年1月8日月曜日

下新庄駅改築方法

阪急京都線と千里線が交差する淡路駅周辺では高架化工事が進んでいます。事業開始は平成9(1997)年で15年後(2012年完成)の完成を予定していたそうです。が、用地取得が遅れに遅れたらしく、平成15年度に8年(2020年完成)、27年度に7年(2027年完成)、さらに令和5年春には、さらに4年遅れると公表され、現時点では令和13年(2031年)完成予定と、当初予定より20年近く遅れていることが新聞でも話題になっていました。ずっと後から工事を始めたなにわ筋線も2031年春の開業を目指しており、このままだと抜かれそうな勢いです。すでに淡路駅周辺に巨大な高層構造物が出現しているにも関わらず、一向に完成しないことから「アワジダ・ファミリア」などと呼ばれてしまっています。

大阪市のHPにある平成29年3月の「事業再評価調書」には、工事の進捗状況が紹介されており、図4の「阪急電鉄京都線・千里線連続立体交差事業 未取得用地箇所図 」によると、土地取得が最後まで難航したのは、下新庄駅東側であったようです。このため、素人目にも下新庄駅の工事が一番遅れているように見えます。しかし、ここ1-2年の間に土地取得が進んだようで、2024年1月現在、更地になっています。これを踏まえて2023年春に2031年完成予定と発表したとすると、下新庄駅の改築にあと6-7年は必要なようですが、そんなに時間がかかる複雑な工事なんでしょうか?

そこで、今の下新庄駅の工事状況を見てみると、どうやって改築するのかがよくわからないのです。下新庄駅は下町のど真ん中にあり、南北に延びる相対式ホーム2面2線からなります。西側は並行して狭い道路が走っており、ほとんど土地はありません。東側には、駅と並行して取得した用地があります。南側には、踏切一つ挟んで東海道新幹線が東西に走り、北側には踏切があります。かなり手狭な印象です。

2024年1月現在、

・東側の用地が更地になっている。

・淡路方面(南)行のホームが淡路(南)側に延伸し(ずれた)、北端の空いたホームには、建物が建設されている。

・淡路方面行のホーム(東側)の外側に高架駅を支える列柱ができ始めている。

・北千里方面(北)行のホームが北千里方面(北)に延伸した(ずれた)。

・ずらして空いた、北千里方面行のホームの南端が取り壊され、空いた土地で、北千里方面行のホーム(西側)の外側に柱が3本でき始めている。

しかし、

・駅の北側に踏切があるため、北千里方面行のホームをこれ以上、北にずらすことはできなさそうである。つまり、これ以上、西側の柱を作る工事ができない。

・この問題を解決するには、東側の用地に仮設線路と仮設ホームを建設し、現在の線路とホームを撤去するしかないように思える。

・しかし、駅南側の新幹線高架との間にはすでに高架線の柱の建設が済んでおり、下新庄駅ホーム南端とのすきまはそれほど広くなく、仮設線路を引き回せるのかわからない。

・ネット上で調べても下新庄駅の改築方法を説明した資料はみつからない。

ということで、下新庄駅をどうやって改築するのか?という疑問は解決せず、ずっともやもやしていました。

そこで、現地に行けばきっと何かわかると考え、2024年正月明けにヒマに任せて下新庄駅まで情報収集に行ってきました。

まず、東側の工事現場壁に掲示された「住民のみなさまへ 作業のお知らせ」とみると、「下り仮ホーム工」「仮ホーム工事」といった工事が行われているようです。やはり仮設線路をつくるのでしょうか。


さらに下新庄駅改札前に掲示された資料をみると、ありました。「②下新庄駅部計画断面図」では、青で書かれた「現在上り線、現在下り線」がオレンジで書かれた高架構造の内側を走っているのに対し、緑で書かれた「1次仮下り線」が右側(東側)の柱の外側に描かれ、さらに、乗降用の仮ホームが、右側(東側)の柱を囲うように島式で作られるようです。また、「2次仮上り線」は、現在下り線をそのまま使うのではなく、高架構造のど真ん中を通るように仮設線路を設置するようです。




となると、ホーム南端では狭い隙間を縫うように、「1次仮下り線」を東側に出す必要があります。この部分は相当タイトなので本当にできるのかなと見に行くと、すでに淡路方面行ホーム南端(延伸した仮設ホーム)の外側に「1次仮下り線」を引くための地盤が作られていました。写真ではわかりませんが、外側に見えるコンクリートの柱の並びをみると、無理ないカーブで取り廻せるようです。




しかし、現状では、南側にずらして延びた仮設ホームと干渉しているため、ここに「1次仮下り線」を通すには、ホームをもう一度北側(北千里方向)にずらして戻す必要があります。ずらすのに必要な、ホームが北側にできているのではないかと見に行くと、ありました、おそらく仮駅の駅舎部分となる構築物の線路側にホームになりそうなデッキが作られています。



また、淡路方面行のホームから駅の北側をみると、高架橋の東側(右側)に作られた仮設線路が見えます。いまは踏切のあたりでうねっていますが、2次仮上り線ができると、仮設線路の上り線とまっすぐにつながりそうですね。しかし、それには、踏切上の線路も付け替える必要があります。そのための、「住民のみなさまへ 作業のお知らせ」にあった「下新庄踏切試掘」工事なんでしょうか。




現地に行けばいろいろわかるというのは本当でした。

おそらく下新庄駅の工事は

1.淡路方面行ホームを南にずらす

2.淡路方面行ホーム(=仮島式ホーム)北側の駅舎などを建設する

3.高架駅の東側の柱を立てる。

4.淡路方面行ホームを北にずらして、1次仮下り線を通す隙間を作る。

5.仮島式ホーム東側、1次仮下り線をつくる。

6.現在の下り線を1次仮下り線に付け替える。

7.現在の下り線を撤去する。

8.仮島式ホーム西側をつくる。

9.現在の(北千里方面)上り線路を、2次仮上り線にずらす。

10.現在の(北千里方面)上りホームを撤去

11.高架駅の西側の柱を立てる。

12.高架駅を作る

というような段取りで進むのではないでしょうか。この段取りの2番目を実施するための用地取得が遅れてしまった結果、現在2,3のあたりまでしか工事が進んでいません。また、さらに、このようなややこしい工事をあの狭い敷地で実施するのだから、時間がかかるのも仕方ないですね。ぶっちゃけ、下新庄駅をしばらく閉鎖するとか(淡路に近いし)、7、8両目のホームがなくても我慢する(京急は常態でそうなっている)など工夫すれば、1年くらい工期が短縮できるような気もしますが、なかなかむつかしいのしょうね。

とくにこの工程の内、問題は、9.であります。2次仮上り線の2次が何を意味するのか不明ですが(1次仮上り線というのが中継ぎ的につくられるのかもしれない)、2次仮上り線は現行の上り線、下り線と干渉するため、別に作ってから切り替えることができません。このため、ひょっとしたら先日の渋谷駅の工事のように、1-2日運転を休止して、線路を横にずらす作業が計画されているのかもしれません。千里線は平行線がなく、しかも関西大学、阪大の通学路線なので、土日、夏休み、冬休みなどに短期間で行ったりするのでしょうか。困難な工事を進める関係者皆様に敬意を表しつつ、今後も下新庄駅の工事に注目していきたいものであります。