2021年12月27日月曜日

生命科学・生物工学のための 間違いから学ぶ実践統計解析

 生命科学・生物工学のための 間違いから学ぶ実践統計解析 R・Pythonによるデータ処理事始め、近代科学社Digital、川瀬 雅也 (著), 松田 史生 (著), 日本生物工学会 (編集)が12/17日に発売されました。ぱちぱち。

本書は川瀬先生と松田の2名で日本生物工学会和文誌に連載した記事をまとめたものであります。オンデマンド出版のため、Amazonで冊子を注文すると1冊づつ印刷されて送られて来るというスペシャルな仕様になっており、本屋店頭では立ち読みできない。そうです。電子版もあります。

出版に当たっての書き手の想いは本の「まえがき」を参照いただくとして、今回は内輪ネタを少々ご紹介です。日本生物工学会和文誌副編集長(当時)の岡澤先生と、生物工学会統計関連のご意見番である川瀬先生の間で、統計解析ができる人材の育成が学会としても重要、日本生物工学会和文誌おける連載企画を練ろう、という話が持ち上がり、統計解析を使って研究していたり、授業もしていた松田にお声がかかって、たしか2015年の年の瀬の新梅田食堂街の居酒屋にて、第一回打ち合わせが行われたのでありました。

「統計解析っていっても本はいっぱいあるし、あれもできます、これもできます。という話が多くてつまんないですよね。。」

「あと、実例が研究とかけ離れているのと、実例をもとに自分のデータで試しても、あちこちで間違えたりして、イマイチ自力で応用できないみたいですね」

「数式が出てくると眠たくなりますよね」

という意見交換の後、

「じゃあ、ネタをバイオテクノロジーに絞って、ありがちな間違いから学ぶ実戦形式にしましょう」

「数式や原理はミニマムでとりあえず動くRやPythonのスクリプトをつけましょう」

「眠たくならないように研究室の先輩後輩の会話形式にしましょう」

「わからない点はX教授に聞くことにしときましょか」

というような流れで案がホイホイとまとまり、2016年4月から隔月連載が始まったのでありました。

統計の土台部分を川瀬先生が書き、松田が脱線させるというスタイルで原稿を作っていきました。研究室の後輩、先輩をAさんと、B君としてジェンダーバランスに配慮したりしましたが、読者のみなさんからは、どうもAさんとB君が、怪しいのではないか、そればっかりが気になって、肝心の統計解析が頭に入らない。というコメントをいただいたときには、最も頑張った部分にご評価を受けて会心でありました。

本書の特徴は、選択と集中をかませて、読者が最後までたどり着くことに注力している点です。たとえば、P22の正規分布表の要約は、有意水準αが0.01と0.05のzの値だけ(2つしかデータがない)が載っております。一方、データを解析する際に一番間違えやすい部分である、サンプルサイズの議論はくどめにじっくり解説しました。

本書の原稿料は川瀬先生、松田にはまったく行かず、すべて日本生物工学会で有意義に使っていただける段取りですので、ここはぜひ、一家に一冊お求めいただけると幸いです。

データサイエンス本3冊一気読み

 

データサイエンスというものがなんなのかよくわかんなくなってきたので3冊まとめて読んでみた。

ゼロからはじめるデータサイエンス 第2版 ―Pythonで学ぶ基本と実践 (2020/5/1), オライリージャパン Joel Grus (著), 菊池 彰 (翻訳)

内容:1冊でPythonの速習から、統計の基礎、確率、仮説検定、Webスクレイピング、機械学習、ナイーブベイズ、重回帰、ニューラルネットワーク、ディープラーニング、クラスタリング、自然言語処理、データベースとSQL、果ては、MapReduceにデータ倫理と、てんこ盛りである。これらのトピックを扱うコードを紹介しながら、コーディングのテクニックを適宜解説している。一方、各トピックは非常に短く、当然、初心者にはよくわからず、中級者には物足りないだろう。原理の説明というより、実装したコードから原理を理解してね。というスタンスなので、数式は少ない。これはいい。データサイエンスを学ぶ本というよりは、データサイエンス活用事例集。として使うのがよさそう。

想定される読者:授業のデータサイエンス演習に使うネタを探している教員。


事例で学ぶ! あたらしいデータサイエンスの教科書(2019/12/17), 翔泳社, 岩崎 学

内容:データサイエンスの手法を網羅する気は全くなく、データサイエンスとは、データから因果関係を抽出するための手法であるという、明確な視点のもと、例題をじっくり解説しながら進んでいく。最後は因果関係を見出すための実験計画にまで踏み込んでいくのも必然であろう。一方、原理の説明を数式でぱっぱっとするため、たぶん、初心者には何もわからない。知っている中級者がみて、ああこの話しているのね。という確認には使えるだろう。あと、コードが少ないので、どういう風にそれを計算するのか、はわからないので独習者にはちとつらいか。講義の教科書向け。

想定される読者:この本を教科書にしている講義の学生。


データサイエンスの無駄遣い (2021/10/28), 翔泳社, 篠田 裕之

内容:中二病ぼっち課題を、超高度な手法で解決していく。データサイエンスっぽいのは、最初の「既読スルー判定ランダムフォレスト」の作成くらいで、あとはチャットボット、漫画を自動作成、プロジェクションマッピング、物理シミュレーションなど、どちらかというとMake系のネタが多い。あと、こういうものを作りたいと思った。作ったものを動かしたらこうなった。というお話部分と、それをどう実装したのか、という解説部分の2本立てになっているが、ネタが多岐に渡るため、実装部分は紙幅の都合上「こうしました」という説明にならざるを得ず、ノウハウや実装上のテクニックにまでたどり着けないのは致し方のないところか。また、作ったツールで問題が解決し、さらに方法論を割と簡単に応用できそうなのも、「既読スルー判定ランダムフォレスト」くらいであり、あとは、夏休みの自由研究ネタ的な趣がすばらしい。

想定される読者:コロナ禍で中学生の子供ができる夏休みの自由研究ネタを探しているお父さん。


3冊読んでますますわからなくなりました。


2021年11月29日月曜日

NC700Xのメンテナンス

 NC700Xに乗り始めて8年半経ちました。最近

・コーナーでふわふわして怖い。サスがへたり気味。

・エンジンの調子が悪い。NC700のエンジンは3000-4000rpmあたりにスムーズに回るおいしい領域があるが、最近はスムースにまわらない。それから。4000rpmより上でびりびりと振動がでる。

と絶不調だった。まず、足回りは、ある日リアサスがガンガン底打ちするようになり、完全に抜けてしまったようだ。そこで、バイク屋にもっていって純正品新品(手ごろな社外品がない)に交換した。しかし、マシにはなったが、まだコーナーでふわふわする。これは予想されたので、リアサス交換時にセンタースタンドもつけてもらった。ジャッキアップしてフロントフォークを外して、フォークオイルの交換をした。バイクをばらしたのは久しぶりだ。オイルは1Lでぴったりだった。

作業はサービスマニュアルとこちらのHPが大変参考になった。ありがとうございます。

その結果、NCの持ち味である起き上がりこぼしのような安定感が復活した。よしよし

次はエンジンである。エンジンオイルの交換をしてみたが、はっきりとした効果がない。プラグもエアクリもまだ寿命を超えていない。Fuel oneを添加したり、ハイオクガソリンを入れたりすると、効果はあるが、完治しない。そこで、タペットクリアランスの調整をしてみた。

NCのエンジンは、SOHCでロッカーアームで駆動し、タペットクリアランスはねじで調節できる。が、これはずれやすそうだ。ので、NC700Xのサービスマニュアルでは、タペットクリアランスの調整は14000kmごとにすることになっている。

また、NC700Xはエンジンが前傾しているため、割と簡単にシリンダーカバーを開けて、ロッカーアームを拝むことができる。これまた、サービスマニュアルを見て、作業内容を確認しつつネットを探すと、、、ありました。そのものずばりの動画が見つかりました。これはありがたい。。

タペットクリアランスを確認すると、2番シリンダーの吸気側のクリアランスがゼロになってました。まったく遊びのない状態。これはまずいのではないか、と思いつつ規定値に合わせて、作業を終わらせ、一走りすると、、スムースな3000-4000rpmが復活した。

追記:と思ったのもつかの間、さらに寒くなるとぐずぐずと不調になった。燃費も24km/Lまで悪化。そこで、オーバークールを疑い調べてみると、NC700Xのラジエター・サーモスタット不調によるオーバークールの記事を発見。早速サーモスタットを発注し、外装をヘルメットケースからバッテリーケースまではがして、交換した。半日仕事だった。その後、真冬の朝に一走りしたところ、症状の完治を確認。NC700Xももうすぐ9年になるので、あちこちガタがきていたんだなぁ。


NC700オーナーの皆さんでエンジンの不調を感じる方は、サーモスタットの交換+タペットクリアランスの調整がおすすめです。チューニングって感じですごく楽しい作業でした。

あと、分析機器もバイクも同じですが、調子がわるいとすぐメーカーに電話したりするおではなく、

・マニュアルを読む。

・工具をそろえる。

・自分で治せる範囲は治す。

のが人生を楽しくするコツですな。。





2021年8月24日火曜日

この理念

 大阪大学の全構成員は、6/11発の「大阪大学の全構成員の皆さんへ」という文書により、大阪大学総長選考会議より「この理念を指針として活動されることを」求められています。「この理念」とは「大阪大学憲章」の理念を指しますが、それがどんな理念なのかは文書には示されておらず、よくわかりませんでした。そこで、筆者はこれまでの不勉強の怠慢を深く反省し、心を入れ替えて「この理念」が意味するところをよく学ぶこととしました。

慶応大学や早稲田大学などの私立大学では、創始者が「建学の理念」を記した文書を残していることが多く、たとえば、慶応大学の構成員や学生は「気品の泉源、智徳の模範」といった理念の意味を解釈するものとして、福沢諭吉の弟子の一人に加わることができ、さらに、正統的な解釈を受け継ぎつつ、時代にあった独創的な解釈を実践することで、建学の精神を引き継ぐことができるという仕組みになっています。

法律をもとに設置されていたかつての国立大学には、このような建学の理念がそもそもなく、独立法人化した平成 15 年ころに各大学が「大阪大学憲章」に当たる文書を作成、公表した経緯があるようです。

まず、東京大学の「東京大学憲章」は、前文1800文字、本文3200文字という重量級で、憲章の改正規則を含めたり、「憲章の意義」という大項目を掲げ、本憲章の使い道を示すことまでしてるのは、東大が唯一です。「本憲章は、東京大学の組織・運営に関する基本原則であり、東京大学に関する法令の規定は、本憲章に基づいてこれを解釈し、運用するようにしなければならない。」とあり、(自分たちの教え子の役人が作った)法令の解釈権が東京大学にあることを示すことが主目的である。と明示しています。さすがである。といえましょう。

東京大学「東京大学憲章」5000文字

その正反対なのが京都大学です。京都大学の「基本理念」は前文が87文字、本文が445文字と東大の1/9しかなく、「自学自習を促し」「教育研究組織の自治を尊重する」などの伝統を盛り込みつつも全体としては、誰かが「京都大学」に対してかくあるべしと指示する憲法のような文章なのか、「京都大学」が構成員の行動の指針を示したのか、どっちともとれるようなとれないようなあいまいさを残すことで、この「理念」にその後の活動が縛られたくない感がひしひしとつたわる作りになっております。他の旧帝大系国立大も、文字数でいうと京大に近いようです。

京都大学「基本理念」532文字

北海道大学「基本理念と長期目標」1739文字

東北大学「使命と基本的な目標」1070文字

名古屋大学「学術憲章」935文字

九州大学「学術憲章・教育憲章」916+1013文字


われらが「大阪大学憲章」ですが、前文が220文字、本文が930文字と文字数では中位グループにあります。

大阪大学憲章「大阪大学憲章」1150文字

「大阪大学憲章」の特徴は、前文においてその源流「かねて大阪の地に根づいていた懐徳堂・適塾以来の市民精神を受け継ぎつつ」への言及がある点です。他にこういう記述をしているのは、札幌農学校を前身とする北大のみです。

さらに、各大学の憲章を読み比べてみますと、「大阪大学憲章」での「1.世界水準の研究の遂行」「2.高度な教育の推進」「3.社会への貢献」「5.基礎的研究の尊重」「6.実学の重視」「8.改革の伝統の継承」「9.人権の擁護」「11.自律性の堅持」に相当する内容は各大学で共通してみられます。一方、各大学が大事にしているキーワード(「門戸開放」(東北大)「フロンティア精神」(北大)「市民精神」(阪大憲章の「4.学問の独立性と市民性」))が独自性アピールとして盛り込まれています。

加えて「みんななかよく」というような「こうあるべし」という文章が掲げられるのは、前提として「みんななかよくなっていないから頑張ろう。」という状況にあると受け取るのが自然であり、「大阪大学憲章」が「7.総合性の強化」(部局間の連携)に掲げる内容は東大、京大も採用していますが、「頼むから部局間で仲良くしてほしいなぁ」という願望が垣間見えます。

「大阪大学憲章」がユニークなのは、「10.対話の促進」において、「大阪大学は、あらゆる意味での対話を重んじ、教職員および学生は、それぞれの立場から、また、その立場を超えて、互いに相手を尊重する。」としている点です。これに該当する内容は、上記の他大学には見られません。わざわざ書くということは、「大阪大学は対話が苦手で、互いに相手を尊重するのが下手だからがんばろう」という戒め、であるととらえるべきと思われます。

6/11発の「大阪大学の全構成員の皆さんへ」という文書が「大阪大学憲章の理念」を指針として活動することを全構成員に求めている以上、本文書そのものが、「対話の促進」を求めた大阪大学憲章の理念の実践の模範例であると思われます。しかしながら本文書の目標が、同会議が最近行った決定に関する対話の促進を求める学内の動きを終結させること、であるというのも明白であり、大阪大学憲章の理念に合わないように読めてしまうのは、もちろん筆者の不勉強に起因する、誤読であることは間違いありません。

では、「大阪大学の全構成員の皆さんへ」という文書がいう、「大阪大学憲章」の「この理念」とはどのようなものなのでしょうか?そこで、前文にはもっとも大事な理念が書かれるのではないかという仮説を立て、「懐徳堂・適塾以来の市民精神を受け継ぎつつ」という記述に注目してみました。本来は「重建懐徳堂」の復興を果たした明治、大正期の大阪市民の学問に対する熱意などを指すと考えるべきですが、大阪大学懐徳堂研究センターのホームページが筆頭に掲げているのは、江戸時代の懐徳堂の代表的な学者である「中井竹山」のイラストです。巨漢だったという「中井竹山」のコロッっとした人物画(結構かわいい)が「懐徳堂」のアイコンとして利用されていることからも、重要人物であったことがうかがえます。Wikipediaによると、中井竹山とは「懐徳堂の四代目学主として全盛期を支える」すごい人であったようです。その事跡として”懐徳堂を大坂における官立学問所とするべく、老中松平定信の来阪時に面会した”こと、学風は、”朱子学(武士階級が自らの立場を正当化するのに使った)を信奉し、朱子学を批判した荻生徂徠を厳しく排撃したが、懐徳堂では、徂徠の「古義学」を排斥することはなかった”ため、「傍目から見るとやや折衷学派的な態度に見えたようである。」などが挙げられており、やや体制寄りの傾向がある、原理原則よりは現実派という人物像が垣間見えます。これをもとに、「大阪大学の全構成員の皆さんへ」が言う「この理念」が「体制寄りの現実派精神を受け継ぐこと」を意味しているという仮説もあり得ますが、そもそも中井竹山についてWikipediaの記述のみに依拠してはならず(学生のレポートなら減点ですね)、これまた筆者の誤読でしょう。

「大阪大学の全構成員の皆さんへ」という文書は、「大阪大学憲章」の理念の正統な解釈の実践を宣言しつつ、一見すると「大阪大学憲章」と矛盾しているように見えてしまう、という謎を提示することで、「大阪大学憲章」とは、メタレベルで読解すべきが理念が存在する、開かれたテキストであることを示唆し、その解読をめぐる対話を促進しようとする、教育的意図と深い洞察にあふれた優れたものであります。今後も、「この理念」を指針として活動していきたいものであります。




2021年7月7日水曜日

暴力と不平等の人類史

 「暴力と不平等の人類史: 戦争・革命・崩壊・疫病」(ウォルター シャイデル、東洋経済新報社)を(飛ばし)読んだ。人類社会における経済活動の発展は必ず、所得水準の格差を持病として伴い、短期的、長期的に各社圧縮を実現したのは、戦争・革命・崩壊・疫病による暴力的な社会秩序の擾乱のみであって、妙薬は今のところ見つかっていないし、見つかりそうにない。と主張している。まず、とにかく長い。長いのだ。いろいろな実例について非常に細かい説明がなされているうえに、筆者は長い文章を書くのが単純に好き。だと思われるため、読んでも読んでも終わらない。ただ、各節ごとに一行のタイトルが振られているため、流し読み派の要望に応えてくれる親切なつくりとなっている。経済活動となる土地、資源、生産設備が一定以上に過剰となると、共有状態から私有化へと移行し、その結果、現れる大地主、大山主、資本家は政治権力と結託して縁故主義的に有利な立場を構築してせっせと蓄財に励み、政治機構の大型化に伴って、蓄財の規模もどんどん大きくなる。というのが、所得格差が生まれるシナリオらしい。

戦争によって格差の圧縮が起きた最も劇的な例として開設されているのが、日本である。江戸期の日本は植民地支配をする気も起きない非常に貧乏な国であり、所得格差はほとんどなかったが、大正、昭和期と上記の経緯を経て財閥、大地主などがしっかり育ったため、現在とは比べ物にならないくらい格差が大きい社会となっていた(ジニ係数で0.57、現在の日本は0.3くらい。アメリカでも0.4程度)。こんな社会では、政党政治は利害の調整ができず頓挫するだろうし、一発大逆転を狙う平民による社会主義革命という筋書きもあながち、無視できないものだったろうなと想像できる。そこで、事態の打開を戦争で図ったとされているが、戦争に必要な資金や食料を調達し、兵士の供給を安定化するために、お金持ちに対する課税の強化と、健康保険制度などのいわゆる所得の再配分政策を超強力に推し進め、敗戦後は占領下で、財閥解体、預金封鎖、土地改革に加えて、インフレが一気に進んだため、格差は一気に圧縮された。とのことである。うーむ。

2021年7月5日月曜日

第 15 回メタボロームシンポジウム in オンラインへのお誘い

第 15 回メタボロームシンポジウム in オンラインへのお誘い


第15回目を迎えますメタボロームシンポジウムを2021年10月14日~10月15日の2日間にわたり、オンラインにて開催いたします。メタボロミクスの勃興より10年以上が経過し、さまざまな領域での活用が本格化しています。そこで、本シンポジウムを医薬、がん、食品、植物、分野での最新の活用事例を知りつつ、その中核を担う計測、インフォマティクス技術の最新動向および未来について議論する場にしたいと考えております。また、コロナ禍での開催のため、完全オンラインで実施する計画です。是非多くの皆様のご参加をお待ちしております。

第 15回メタボロームシンポジウム実行委員長
大阪大学 福崎英一郎


開催概要
第 15 回メタボロームシンポジウム in オンライン
2021年10月14-15日

主催:第 15 回メタボロームシンポジウム実行委員会
共催:大阪大学先導的学際研究機構産業バイオイニシアティブ研究部門
日本生物工学会メタボロミクス研究部会
実行委員長 福崎英一郎 大阪大学大学院工学研究科 教授

参加費:一般 5000 円 学生:無料
参加登録 2021年 8 月 1 日から10月15 日
演題登録 2021年 8 月 1 日から 8 月 31 日

場所:オンライン
ポータルサイト上で開催

シンポジウムはZoom ウェビナーでリアルタイム配信
ポスターセッションはZoom Breakout roomで開催

詳細につきましては以下の URL をご覧ください
http://metabolome2021.com/



プログラム(作成中)

1日目(2021年10月14日(木))
セッション1 リピドミクス

座長:有田誠(慶應義塾大学),馬場健史(九州大学)

腸管寄生原虫“赤痢アメーバ”生体膜脂質の網羅解析と特徴的に検出された超長鎖セラミドの機能解明
見市文香(佐賀大学医学部分子生命科学講座免疫学分野)

定量リピドーム分析によるエクソソーム解析
和泉自泰(九州大学・生体防御医学研究所)


セッション2 食品
吉田聡(キリンホールディングス株式会社),及川彰(京都大学)

機械学習を用いた微生物培地の最適化
小西正朗(北見工業大学・工学部)

ビール発酵中のホップと酵母の相互作用の解析と応用
土屋友理(キリンホールディングス・飲料未来研究所)

日本酒の商品開発へのメタボローム解析の活用
霜鳥朝子(株式会社一ノ蔵・商品開発室)

セッション3 OTRI特別セッション
座長:福崎英一郎(大阪大学)

大阪大学先導的学際研究機構・産業バイオイニシアティブ研究部門とは
福崎英一郎(大阪大学・工学研究科)

酵素を使った医療・ヘルスケアのためのものづくり
境慎司(大阪大学・基礎工学研究科)

食多様性とヘルスプロモーション -国内外のフィールド調査から
木村友美(大阪大学・人間科学研究科)

細胞の外側で代謝反応を駆動する
本田孝祐(大阪大学・生物工学国際交流センター)


セッション4 インフォマティクス
座長:金谷重彦(奈良先端科学技術大学院大学),有田正規(国立遺伝学研究所),津川裕司(東京農工大学)

質量分析データ解析プログラムMS-DIALの現状と課題
津川裕司(東京農工大学)

大規模ヒト血漿メタボローム解析における基盤構築と情報活用法について
三枝大輔(東北大学)

深層学習を用いた二次代謝物質の合成経路予測と活性予測
小野直亮(奈良先端科学技術大学院大学)

メタボロームデータの標準化と共有のための統合メタデータベース開発
福島敦史(理化学研究所)

ポスターセッション
オンライン懇親会


2日目(2021年10月15日(金))

セッション5 植物
座長:斉藤和季(理化学研究所),草野都(筑波大学)

トマトの着果時に活性化させる代謝経路と制御因子
有泉亨(筑波大学生命環境系)


マルチオミクス解析による農業生態系のデジタル化
市橋泰範(理研BRC)

同位体ラベル化二次代謝産物を用いたカタボリズム経路の解析-グルコシノレートから硫黄原子をリサイクルする代謝機構-
杉山龍介(Department of Pharmacy, Faculty of Science, National University of Singapore)


セッション6 医薬・フラックス
座長: 岡橋伸幸(大阪大学),杉本昌弘(東京医科大学),杉浦悠毅(慶應義塾大学)

細胞老化特有の代謝メカニズムを標的とした『Senolytics』療法の可能性
城村由和(東京大学医科学研究所 癌防御シグナル分野)

尿中ステロイド代謝物の一斉測定
中川央充(慶應大学病院 臨床検査科)

肝障害に伴う薬物腎臓動態変化に関わる臓器間相互作用
荒川大、河西巧、加藤将夫(金沢大学 医薬保健研究域 薬学系)

13C代謝フラックス解析法を用いた好中球の中心炭素代謝の解析
岡橋伸幸(大阪大学  大学院情報科学研究科   バイオ情報計測学講座)

セッション7 新技術・新動向
座長:三浦大典(産業技術総合研究所),小田吉哉(東京大学)

Oxygen Attachment Dissociationを用いた新たなノンターゲットリピドミクス解析システムの開発と応用
内野春希 (慶應義塾大学大学院)

スループットと信頼性の向上を志向した血清・血漿リピドミクス
徳岡涼美(東京大学大学院)

日本マイクロバイオームコンソーシアムの活動紹介とメタボローム測定への期待と課題
寺内淳(日本マイクロバイオームコンソーシアム)

セッション8 がん
曽我朋義(慶應義塾大学),平山明由(慶應義塾大学)

肝細胞癌メタボローム解析(仮題)
森根裕二(徳島大学 消化器・移植外科)

がんにおける核酸代謝制御機構の解明(仮題)
牧野嶋秀樹(国立がん研究センター)

低酸素膵臓がん細胞が分泌した細胞外小胞のメタボローム解析
早坂亮祐(慶應義塾大学 先端生命科学研究所)

ポスターセッション

若手勉強会「「実践メタボロミクスプロトコル集」の著者に直接日頃の悩みを相談しよう!」

2021年6月30日水曜日

セブンイレブンで現金支払いの不足をnanacoで払いたい

 今年の春ごろから、セブンイレブンのレジがよりセルフレジに近いものに、順次交換されている。店員さんが商品の入力を済ませると、あとは、お客が支払い方法を選び、店員を介さず、カードの処理、お金の投入=>おつりの処理、レシートの受け取りまでセルフで行う。大学の近くのセブンでは、「財布の小銭をまとめて投入すると、小銭をなるたけまとめて受け取る両替ができます」と手作りポップでアピールまでしている。最近は、電子決済が増えたので小銭を使う機会が減ったので、手元の小銭を速攻使い切って、財布はなるたけ軽くしたい。そこで、本日の買い物で手元の小銭をジャラジャラと全部、投入し、「あのー不足分をnanacoで払いたいんですけど」と申し出たところ、「あーできませんね。」の一言で撃沈。これができたら小銭を減らしに、コンビニで雑誌を買ったりしに行くようになると思うし、便利だと思うんだけどなぁ。なんでできないんでしょ?


2021年6月25日金曜日

あなたは私が騎士であると正しく信じることはないでしょう

世界はありのままに見ることができない なぜ進化は私たちを真実から遠ざけたのか」(ドナルド・ホフマン、青土社)を読んだ。意識の内部で認識する外部(世界)と実際の外部は一致するのか?という大昔に科学哲学の講義で聞いたネタを認知心理学の立場から切り込んでいくというものである。この話のカギは筆者が見つけた、Multimodal user interface (MUI) theoryで、これは、進化的ゲーム理論を使うと、意識の内部で認識する外部と実際の外部とを、一致させないように外部を認識する戦略が進化的に安定となる。というものである(この理論の詳細について本書で詳しい説明がないのは残念だ)。これはすごい面白い。本書はそこから、主に錯視の実際例をてんこ盛り挙げて、ほらほら真実って錯視かもという方向に話が行ってしまう。

この問題について、なぜ、筆者が様相理論の知見を活用しないのかがわからない。MUI理論の主張とは、「決定不能の論理パズル」(レイモンド・スマリヤン、白揚社)で取り扱う騎士と奇人の島における決定的な命題「あなたは私が騎士であると正しく信じることはないでしょう」に対応していると思われる。この命題を信じるとき一定の自意識を持つ推論者は自分が整合であると考えたとき、不整合になってしまう(矛盾する命題を信じることになる)ことが知られている。ここで肝心なのは、自分が整合であることを自分の内部で証明できないだけであって、外部から見ると整合なのは間違いない。つまり、ドナルド・ホフマンの主張「世界はありのままに見ることができない」そのものが、「あなたは私が騎士であると正しく信じることはないでしょう」という命題であり、彼の主張を受け入れると我々は不整合になるしかない。ということになる。

善と悪のパラドックス ーヒトの進化と〈自己家畜化〉の歴史」(リチャード・ランガム, NTT出版)では、ヒトは反射的な攻撃衝動がすごく弱く、一方で計画的な攻撃衝動がすごく強いことに注目し、これらが、ヒトの進化の過程で起きた〈自己家畜化>によるものであることを指摘する。まず、キツネの飼育実験から、反射的な攻撃衝動が弱い個体を選択的に継代すると数十オーダーの世代で人懐っこい集団となり、同時にネオテニー(幼形成熟)の形質が現れることを紹介する。さらに、同一祖先から進化したチンパンジー(反射的な攻撃性大)とボノボ(反射的な攻撃性小)の比較から、ボノボは食料入手に非競争的な環境にいるため、進化の過程で反射的な攻撃衝動が強い個体を排除し、衝動が弱い形質が有利となる選択圧が生じたことから、特にメスの連携により粗暴なオスを排除することで〈自己家畜化〉が進み、その結果現在観察されるネオテニーにつながったと推論する。人類の特に骨の形態にはネオテニーの要素が非常に強く表れているので、ヒトも進化の過程で

・食料が入手などで競争的ではない環境にいて

・反射的な攻撃衝動が強い個体を排除するためのコミュニケーション能力(言語)を発達させ

・その結果自己家畜化した

のではなかろうかというのが筆者の主張である。なるほどーである。もしこれが本当なら、父殺しの神話(粗暴なオスの排除)が人間社会において普遍的な理由が説明できるかもしれない。さらに「言語の起源」(ダニエル・L・エヴェレット、白揚社)において、シンボルおよび言語の起源として推定された「返済することのできない負債」は婚姻関係によって生じるものであったが、婚姻関係とはずばり、集団内の安定化を図る手段である。ヒト進化の過程における婚姻を通じた利害関係の発生が、言語の発生をつよくドライブしたのかもしれない。

さらに、われわれの意識は、言語というか論理(推論)に強く制約されている。われわれは論理的に推論できることしか理解できない。興味深いのは「決定不能の論理パズル」で取り扱われる様相理論のように、「命題pは真か、偽のどちらかである」という2分法はだけは絶対に疑われないという点である。これは「私はこの集団の身内(p)か、身内じゃない排除すべき敵(not p)のどちらかである」という2分法に起因すると考えることできるかもしれない。この命題はシェファー・ストロークという結合子(|)を用いて、p|not pと書ける。これは、pとnot pは両立しないという意味である。さらにこの記号があると、他のすべて論理的結合子が生成できることが知られている。つまり身内か、身内じゃないのどちかかという2分法が、論理そのもの、われわれが認識できる世界の起源となっている可能性がある。

もう一つ、「反穀物の人類史――国家誕生のディープヒストリー」(ジェームズ・C・スコット、みすず書房)では、狩猟採集で非常に豊かだったチグリス、ユーフラテス川流域で〈自己家畜化〉してまで農耕技術を開発した理由が、最大の謎とされていた。しかし、狩猟採集で非常に豊かだった環境だったからこそ、上記の条件が一気にそろって、コミュニケーション能力(言語)の発達=>大規模共同作業としての農耕=>社会の発生がおきたんじゃないの?と考えることができるかもしれない。となると、人類を農耕に駆り立てたのは、みんなと協力すると楽しいという喜びか、あるいはみんなと協力しないとと排除される。という恐怖ということになるだろう。


 

2021年6月17日木曜日

Moonflower Murders  ユウガオ殺人事件

 Moonflower Murders (Anthony Horowitz, Random House UK Ltd)を読んだ。前作カササギ殺人事件とは異なり、最初40%くらいまでは、地の分(Susan Ryelandパート)が続き、伏線がせっせと張られていくのであるが、最初はこの部分で力尽きしばらく放置していた。最近、やる気を復活し、最初のから再読、作中作の「Atticus Pund Takes the Case」のAtticus Pundによるwhodunitを楽しく満喫し、その後のSusan Ryelandパートのオチまで一気に読んだ。今回で結構、Susan+クレタの設定を使い切ってしまったようにも思うのだが、本シリーズの次回作は何が起きるのだろうか。Atticus Pund はあと7作?もあるし。。それから、読み終わって(600ページもあるので大変なのだ)やらやれと思ったら、Hawthorneシリーズの10月にでる次回作「A Line to Kill: A Novel」の予告が。今回は南海の孤島ものらしい。楽しみである。


2021年4月25日日曜日

分析者のためのデータ解釈学入門  データの本質をとらえる技術

 分析者のためのデータ解釈学入門  データの本質をとらえる技術(江崎貴裕、シソム株式会社)を読みました。本書が優れている点は、数理モデル(応答変数=f(説明変数)という関数)を作るには、理解志向型(データの背後にある現象のメカニズムを理解する)と応用志向型(予測やデータ生成などデータ活用を行う)という異なる方向性があること(p197)。さらに、分析の目的には、1データの記述・探索、2予測、3因果関係(p231)の3つがあり、それぞれ異なる分析のデザインを要求することが明確に述べられている点であります。

医薬品化合物の構造を説明変数、応答変数を活性として数理モデルを構築する研究を定量的構造活性相関研究(QSAR)といいます。藤田稔夫先生は、「藤田カンファレンス」という勉強会で、QSARの発表に対して、予測だけできてもあかんと、理解志向型のモデリングの重要性をしばしば指摘しておられたことを思い出します。そもそもQSARは、ある化合物の活性を正確に予測すること、目指した応用志向型の技術であります。技術者ではそれでいいのかもしれませんが、研究者は「活性がタンパク質に結合するという現象のメカニズム」を理解を目指しているのであり、それに資する数理モデルを駆使すべきです。本書は明確に「データの記述・探索」のスタンスから書かれています。

一方、近年、深層学習技術が発達して、予測に特化した応用志向型の技術が著しく進展しています。それは素晴らしいのですが、よくないのは、説明/予測をごっちゃにした話も増えていることです。

「100個くらいのデータからAIで予測モデルを構築し、さらに重要な説明変数を絞り込みます。」

とかいう話を聞いたら要注意です。また、この話を読んであまり不思議に思わない人は、本書を読んで勉強しましょう。


2021年3月24日水曜日

起源の神話を粉砕する

 起源の神話を粉砕する本を何冊か読んだ。

負債論: 貨幣と暴力の5000年(デビッド・クレーバー)」が粉砕を目指すのは、経済学が説く貨幣の起源に関する神話である。昔々、物々交換の経済がありました。しかし、欲しいものと、余っているものとのマッチングが難しいです。そこで貨幣が登場して効率化できました。めでたしめでたし。というお話は、これまでのところ物々交換しかない社会が見つかったことがない。という点と、原始的な社会における貨幣が、人と人との関係を取り結ぶために用いられる、例えば婚姻における結納品のような役割を持っている、点で退けられる。貨幣とは「どうやっても支払い不可能である負債」存在することを示す証拠として贈られる。貨幣を渡して、相手にわびをいれ、負債のあることを認め、その解消に努めることを象徴するものとしての貨幣である。レヴィストロースの親族の基本構造では婚姻関係の規則が、社会構造を構築することを示したとされるが、その裏バージョンとして、負債が社会を構築しているとも言えることになる。さらに、婚姻関係は相当古いものなので、貨幣の期限も相当古く、「どうやっても支払い不可能である負債」という概念がシンボル化した段階で登場したのだろう。さらに、そこに暴力が介入すると、「どうやっても支払い不可能である負債」が奴隷によって支払われるようになる。借金のカタに家族が売り飛ばされるというやつですな。また、本書で問題になるのは、この世には返さなくてはならない借金と返さなくていい借金があり、それは、貸し手と借り手の非対称な力関係すなわち暴力が関わるという点を指摘する。経済学的な貨幣の起源論が隠したいのは、貨幣に必然的に付随する非対称性、暴力だったのである。

本書の面白い指摘としてアメリカ国債がある。現在アメリカは世界の各地に自分の基地を置いている。そういう国は歴史的に帝国と呼ばれる。アメリカは強大な軍事力の維持にドルを使っている。そのドルでアメリカ経済は外国(日本とか)から商品を買い、日本は取得したドルで、アメリカ国債を買っている。これって帝国への上納ってやつじゃないの?という指摘は非常に興味深い。


言語の起源 人類の最も偉大な発明(ダニエル・エヴェレット)」が粉砕を試みるのは言語の起源、ヒトは10万年くらい前にFOXP2という遺伝子に起きた変異で言語を話すようになり、その言語の核心とはチョムスキーの生成文法がいうところの「再起」である。というお話である。ます、言語ができる前段階には、シンボルが必要であること、シンボルさえあれば、言語まではそれほど遠くないことが議論される。言語の存在を直接示す物的証拠はまず見つけられないが、シンボル(人の顔)の存在を示唆する化石なら、100万年以上前のホモ・エレクトスの時代のものがあるらしい。さらにシンボルは芸術や文明にとって必須であり、シンボルがあるなら言語もそれに付随してあると考えられるのではないか、むしろ社会と言語の成立は切り離すことができるのか、という問題提起が行われている。また、「再起」がない言語の存在を示すことで、チョムスキーの生成文法というか言語=文法という観点を完膚なきまでに粉砕しようとしている。

本書では最初のシンボルについて何も述べられていないが、「負債論」と組み合わせて考えるとするなら、それは「どうやっても支払い不可能である負債」であってもおかしくはなく、たとえば20万年前のベレカット・ラムのビーナスは、そのシンボルとしての美術作品なのかもしれない。「言語の起源」は貨幣に関する言及を一切していない、負債については一瞬登場する。アマゾンの古い言語であるピダハン語の例で「私はあなたにバナナをあげる」「そうしていいよ」というもので、その説明としてあらゆる贈り物がお返しを前提にしており、バナナをあげるなら明日はあなたが私に何かくれるべきだという交換が前提にされている。という解説においてである。もしこの点を拡大解釈するなら、負債があるという感情が生じて、シンボル化することで、貨幣と言語が同時に生まれた。とも言えるのかもしれない。


民主主義の非西洋起源について:「あいだ」の空間の民主主義(デビッド・クレーバー)」は書名のとおり、民主主義の起源はアテネにある。という通説を粉砕する。
まず、フランス革命やアメリカ独立宣言では共和制の構築が目指されていて、民主主義という用語すら存在しない。民主主義というアイデアは、文化と文化のあいだイロコイ族の連邦制度や、大西洋の海賊組織など、いろんな人びとが折り合いをつけてうまくやっていかなくてはならないときに生まれやすく、アメリカ合衆国憲法もそれを参考にした節があるが、もともとの支配層は、民主主義をやる気は全然なくむしろ嫌いだった(だって支配層だから)。その後、帝国主義的な国家の構築が進むと「民主主義」というタームが、市民の統治(人気取り)に都合がよいことに気づき、植民地支配の中で強化された可能性がある。こういう状況では、民主主義の正当化つすばらしい起源が必要となり、アテネの直接民主主義がそれにでっちあげられた。らしい。

これらを読んで思うことは、何かの起源について、現在の我々の常識や認識のフレームがそれを隠ぺいしてしまっている可能性がある。ということを疑ってかかる必要があるということである。生命の起源、代謝の起源。についても同様ではないか。


2021年2月25日木曜日

Python の DocstringをGithubで公開

 Python の DocstringをGithubで公開する方法


・Sphinxをインストール

conda install sphinx

・mfapyパッケージ内に

./docs

./htmlというフォルダを作る。

・公開したい(例:mfapy)パッケージ内で

sphinx-apidoc -F -o ./docs ./mfapy

という呪文を唱える ./mfapyのなかにモジュールのPythonファイルが入っている。

・./doc/conf.pyを開き

# import os

# import sys

# sys.path.insert(0, 'C:\\Temp3\\mfapy\\mfapy_latest\\mfapy')

をコメントアウト

extensions = [

    'sphinx.ext.autodoc',

    'sphinx.ext.viewcode',

    'sphinx.ext.todo',

    'sphinx.ext.githubpages',

    'sphinx.ext.napoleon',

]

のように'sphinx.ext.githubpages'、'sphinx.ext.napoleon'拡張を追加

・次なる呪文

     sphinx-build -a ./docs ./html

を唱える。./html内にファイルができる。

・./html/index.htmlを開き


<!DOCTYPE html>


<html lang="en">

  <head>

    <base href="{{site.github.url}}" charset="utf-8"/>

となるよう<base href="{{site.github.url}}" charset="utf-8"/>を追加


・Githubに例えば./mfapy-document/のようなレポジトリを作成する。

・Githubにプッシュ

・できたレポジトリのsetting => GitHub PagesのSourceをmasterにしてSaveする

・うまくいくと

https://fumiomatsuda.github.io/mfapy-document/

のように表示される。


頑張ってDocstringを書こう。





2021年1月12日火曜日

自粛しないがゲーム理論の最適戦略

 現在担当している講義ではさまざまな最適化法を取り上げ、線形計画法、非線形最適化法を解説している。おまけとして、ゲームの理論の最適戦略にも触れている。メイナード・スミスの「進化的に安定な戦略」は下記のようなタカ・ハトゲームで説明できる。

・集団にたくさん個体がいる。エサは常に2匹で分け合うがそのときにハト戦略とタカ戦略をとる。

・両者がハト戦略の時の利得は双方2(A)

・こっちがタカ、相手がハトのときはこっちの利得が4、むこうは0(B)

・両者がタカの時は双方1(C,喧嘩するのでコストがかかる)

この時、100%タカ戦略が「進化的に安定な戦略」である(ナッシュ均衡でもある)。仮にハト戦略100%の個体のみからなる集団にタカは侵入できるが(B>A)、逆はできないからである。

つぎにお互いの戦略がタカの時の利得を―1に変えると、タカ戦略は進化的に安定な戦略にならない。

・お互いがハト戦略の時の利得は双方2(A)

・こっちがタカ、相手がハトのときはこっちの利得が4、むこうは0(B)

・お互いの戦略がタカの時は双方-1(C,喧嘩するのでコストがかかる)

この場合は、相手の戦略によってこちらの最善手が異なるので(相手がタカの時はハト、相手がハトの時はタカ)、確率的にタカとハトを選ぶ混合戦略Qをとる。タカを選ぶ確率をqとすると、q=2/3の時に、

混合戦略Qのみをとる集団にハト100%の個体が侵入した時の利得は2/3

混合戦略Qのみをとる集団にタカ100%の個体が侵入した時の利得は2/3

混合戦略Qのみをとる集団に混合戦略Qの個体が侵入した時の利得は2/3

となり、混合戦略Qはハトにもタカにも負けない「進化的に安定な戦略」となる(計算は自分でやってみてね。このとき、混合戦略Qのみをとる集団には、どんな混合戦略をとる集団が侵入しても利得は2/3になるという性質がある)。


このタカ・ハトゲームが重要になるのは、コロナ状況下の外出・自粛の選択戦略を考えるときである。

・両者が自粛戦略の時の利得は互いに2(A)

・こっちが外出、相手が自粛のときはこっちの利得が4、むこうは0(B)

・両者が戦略が外出の時はお互い-1(C,感染が拡大するのでコストがかかる)

このとき、進化的に安定な戦略は、上記と同様「混合戦略Q:2/3の確率で外出する」である。現状をうまく説明できているような気がする。

「進化的に安定な戦略」である混合戦略Qで、外出を選ぶ確率qを下げるには、上記の利得を人為的に変える必要がある。これもいろいろ利得表を変えて計算するとわかるが、たとえば外出を選ぶ確率qを1/3に半減したい場合、

・市中感染のリスクが高くなると人は行動を変えるだろうと考えるが、それには、両者が外出したときの利得が-4にならないといけない。つまりかなり市中感染のリスクが高くならないと人は行動を変えない。

・休業補償をすれば自粛するだろうと考えるが、両者が自粛した時の利得を3.5にしないといけない。つまり休業補償はかなり手厚くしないと効かない。

ということが推測される。さらに一般化すると

・両者が戦略が外出のお互いの利得をk(k<0)とすると q = 2/(2-k)

・両者が戦略が自粛のお互いの利得をk(k<4)とすると q = (4-k)/(5-k)

という関係があり、kとqが非線形なので大きくkを変えないとqに効かないこともわかる。つまりこれらの手段は効率が悪い。

もう一つ手があり、

・こっちが外出、相手が自粛のときのこっちの利得を4-k, むこうの利得をkとすると、q=(2-k)/3となる。k=1の時にq=1/3となる。

つまり、外出する人のメリットを減らし、その分自粛する人のメリットが増える。という仕掛けがあると、行動を変えられると予想される。外出した人から料金を徴収し、自粛した人には利益がある。という仕組みを考えるとよいのではないか。また、式が線形なので、kの変化量に比例してqも変化する、やったらやっただけ効く可能性がある。

例えば、大都市圏の交通が鉄道に大きく依存していることに鑑みて、一般利用者の鉄道料金を一気に3倍とか5倍に値上げする。電車に乗って出勤しないとマズイ仕事をしている人は電子定期券ユーザーであると思われるので、定期券の電車賃の値上げはしない。がその代わりに、平日1日電車に乗らないと定期代の1-2%がご褒美のおやつ台としてSuicaポイント(ただし2週間で失効)ですぐもらえる。とか。片道500円の距離の通勤定期は月20000円くらいなので、一日200-400円をもらって、地元ですぐ使ってくれたらいいだろう。鉄道各社のインフラを使えばすぐ可能な気がする。

ただ、限界も見え見えである。

・通院に電車が必要。のようなケースのフォローが大変そう。

・自転車や車で通ってポイントをちょろまかす悪用が横行しそう。

・そのせいで道が自動車でむっちゃ渋滞しそう。

などとあまり現実的ではないか。ただ、なにかいいアイデアが必要とされているのは間違いないだろう。