2021年7月7日水曜日

暴力と不平等の人類史

 「暴力と不平等の人類史: 戦争・革命・崩壊・疫病」(ウォルター シャイデル、東洋経済新報社)を(飛ばし)読んだ。人類社会における経済活動の発展は必ず、所得水準の格差を持病として伴い、短期的、長期的に各社圧縮を実現したのは、戦争・革命・崩壊・疫病による暴力的な社会秩序の擾乱のみであって、妙薬は今のところ見つかっていないし、見つかりそうにない。と主張している。まず、とにかく長い。長いのだ。いろいろな実例について非常に細かい説明がなされているうえに、筆者は長い文章を書くのが単純に好き。だと思われるため、読んでも読んでも終わらない。ただ、各節ごとに一行のタイトルが振られているため、流し読み派の要望に応えてくれる親切なつくりとなっている。経済活動となる土地、資源、生産設備が一定以上に過剰となると、共有状態から私有化へと移行し、その結果、現れる大地主、大山主、資本家は政治権力と結託して縁故主義的に有利な立場を構築してせっせと蓄財に励み、政治機構の大型化に伴って、蓄財の規模もどんどん大きくなる。というのが、所得格差が生まれるシナリオらしい。

戦争によって格差の圧縮が起きた最も劇的な例として開設されているのが、日本である。江戸期の日本は植民地支配をする気も起きない非常に貧乏な国であり、所得格差はほとんどなかったが、大正、昭和期と上記の経緯を経て財閥、大地主などがしっかり育ったため、現在とは比べ物にならないくらい格差が大きい社会となっていた(ジニ係数で0.57、現在の日本は0.3くらい。アメリカでも0.4程度)。こんな社会では、政党政治は利害の調整ができず頓挫するだろうし、一発大逆転を狙う平民による社会主義革命という筋書きもあながち、無視できないものだったろうなと想像できる。そこで、事態の打開を戦争で図ったとされているが、戦争に必要な資金や食料を調達し、兵士の供給を安定化するために、お金持ちに対する課税の強化と、健康保険制度などのいわゆる所得の再配分政策を超強力に推し進め、敗戦後は占領下で、財閥解体、預金封鎖、土地改革に加えて、インフレが一気に進んだため、格差は一気に圧縮された。とのことである。うーむ。

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