2015年10月5日月曜日

二兎を追う者は

「二兎を追う者は一兎をも得ず」と言うように、2つのことをいっぺんにしようとすると、どちらもうまくいかない(ことがおおい)ものであります。メタボローム分析はそれにもかかわらず1回の分析で複数の代謝物を定量しようとしてるところにあふれるロマンがあるわけです。さらに、化合物の構造を決めつつ、その定量もしたいと、これまた欲張りに二兎を追っています。
Q-TOFは、四重極マスフィルターを用いたプリカーサー選択と、TOFの高速スキャン、高分解能を組合わせた装置です。あきらかに構造解析に特化したMS/MS取得用定性マシンです。Qを使わずにTOFとしてつかうと、定量にも使えなくはないが、感度もダイナミックレンジも十分とは言えない。というものでした。2000年代前半まではプロテオーム分析のペプチド同定用MS/MS取得マシンとして大活躍しておりました。が、その後より高分解能なOrbitrapの登場とともにその座を脅かされます。分解能では太刀打ちできないので、これまで高感度化、高ダイナミックレンジ化、高速化が推し進められてきました。その結果、定性にも定量にも使える二兎を追いたい人のための欲張り煩悩マシンとしてSWATHと言う分析モードが登場してきました。詳細はメーカーのHPをご覧くださいね。
SWATHがおもしろいのは、全チャンネルMRMという夢の定量モードにも見えますし、全プリカーサーMS/MSという夢の定性モードにも見えてしまう点です。SWATHを定量モードと見るか、定性モードと捉えるかは、分析屋のセンスの見せ所です。とにもかくにもこの調子で動作の高速化が進むと、m/z 100-1000の901プリカーサーイオンのMS/MSデータを取得などという、完全SWATHが実現するのも時間の問題、4-5年後にはできるようになるでしょう。そうなると、分析と定性、どちらも完璧に(厳密に言えば最高に完璧とはいえませんが)できちゃう、つまり、二兎を追っていたつもりが実は一匹の麒麟を追いかけていたというこれまたよくできたお話になるんじゃないかとわくわくしてしまいますね。

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