2018年1月11日木曜日

いい湯加減の第9

昨年の年末から新年にかけて、ベートーベン第9交響曲、いわゆる第9を聞いていたーーとくに第4楽章で一回合唱でがーっと盛り上がったあと、トライアングルのリズムとピッコロによるトルコ風行進曲のなんかちょっと軽い感じの伴奏をバックにしてテノールが歌いまくった後に急に始まる、やや切迫感のある弦楽のスケルツォ風フゲッタがお気に入りで、このパートの後、あの有名な大合唱が始まるあの部分であるーー、というのもそもそもは、チェリビダッケのテンポが遅い録音を聞いたことにはじまっていて、このスケルツォ風フゲッタのパートに関していうと、この遅さがドンピシャであり、さらにチェリビダッケ+ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の異様に純度の高い演奏のせいで、なんだかとても感動してしまったのであるが(ときどきこうなる)、同じパートをたとえば、カラヤンとか、ヴァントとか、フルトウェングラーなどで聞くと、かっとぶかのような高速テンポですいすいとすすむため、感動している暇がないのはなぜだとばかりにいろいろ聴いてみると、そもそも第9交響曲の正しい姿というのはもはや誰も知らないわけで、指揮者が結構勝手にテンポを設定して好きに演奏していたらしく、90年代ころの古楽器ブームの中で、極力元の姿、楽譜に忠実にといういい子ちゃんな観点から、ガーディナーの録音が高く評価されたりして、これはこれで大変素晴らしい演奏で愛聴しているのだけど、ただ、肝心のスケルツォ風フゲッタ部分は楽譜の指示通りに弾くと、アナタ、速い、速すぎるあるよ、というテンポになってしまうようでおいおいと思っていたところ、異同を整理したベーレンライター版の楽譜が出た1996年に以降は原典というアイデアも怪しくなってきたという話にふーんと思って聴いてみた2010年のティレーマンの録音の快速っぷりに、もうこれはこれでありかなぁとも納得させられてしまった年末年始なのであった。で、昨日Youtubeでムーティ+シカゴ交響楽団の演奏を発見し、いい湯加減のテンポの遅さに、癒やされたのでした。問題の場所は1時間5分目くらいから始まります。

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