A Line to Kill (Anthony Horowitz, Penguin) を読んだ。Daniel Hawthorneシリーズの3作目。本シリーズのウリは、作者であるAnthony Horowitzと同姓同名の登場人物が語り手となっている点だ。さらに、作中の世界に現実の世界を混ぜ込む遊びが行われている。本書は時系列的には、シリーズ第1作の「メインテーマは殺人 The Word is Murder」が出版される前にあたり、「The Word is Murder」として発売されることになる本の販売促進会議のために、Penguin Random Houseのオフィスへ、HawthorneとHorowitzが呼び出されるところから話が始まる。このオフィスは実在しており、会議に出てくるPenguin Random Houseの偉い人たちもおそらくは、実在するか、実在する人物をモデルにしたものだろう。その会議で、Alderney島で行われるBookフェスティバルに参加することが決まり、、というストーリである。オルダニーAlderney島はイギリス海峡のフランス寄りに実在する島で、本書の最初に掲載された絵図の通りに、主人公たちが宿泊するBraye Beach Hotelもその隣のThe Divers Innも実際にある。が殺人事件の舞台となるThe Lookoutの場所には、Google mapを見るとなにもなく、ここから先はフィクションのようだ。
本書を読んむとすごく違和感がある。というのもミステリの鉄則が守られていない。ミステリの鉄則その1である、第一の殺人は始まってすぐ起こせ、はさくっと無視され開始35%まで引っ張られている。主人公が必ず身を切る(イタイめにあう)。という鉄則も守られていない。一番大事なすべての伏線を回収せよ。という鉄則も守られていない。Penguin Random Houseでの会議への、Hawthorneの推理が当たっていたかわからない。絶対あるはずのLineをめぐる言葉遊びの解説もない。ほかにもHawthorneの謎の行動についてもオチはなく、謎解きの過程で、Horowitzが一番心配しているのは、もし○○が犯人だったら意外性もなく、面白くないので、本が書けないじゃん。点であるが、読者は、でも本を書いているからそうはならないんだろうな。と思いつつ、話が進むが、この伏線も100%回収されたような気がしない。読後にぜんぜんすっきり感はない。したがって、本書のみでの評価は低めになる。おそらく今年の年末に和訳が刊行されるであろうが、賞レースで前2作ののように、ダントツ1位をとれるのかビミョーである。が、本書の最後に、次作への伏線が用意されており、次作が楽しみなのは言うまでもない。
Anthony Horowitzの次回作は今年の5月に出るボンドものらしい。その次はAtticus Pund を飛ばして、本書の続編になるといいな。
追記(2022.3.1):と思っていたら、Anthony Horowitzの次次作 The twist of a Knife の予告が出た!こちらの期待通りのDaniel Hawthorneシリーズの4作目。予告文をみると”3作目までで、コンビを解消し、関係が冷え込んだHawthorneとHorowitz。Horowitzは新作の演劇 Mindgameを公開するがHawthorneは初日の招待に応じず。MindgameはSunday timesの評論家に酷評されるが、翌日、その評論家が小刀で心臓を刺されて見つかり、のちに、その小刀がHorowitzのもので指紋もべたべたあるころが判明する。Horowitzは第一容疑者として逮捕され、収監され大ピンチ。最後は「さらに絶望的な状況に追い込まれた彼は、自分を助けてくれるのはたった一人の男しかいないことに気づく。しかし、Hawthorneはその電話に出るだろうか?」と、盛り上げてくれます。8月に出るらしいので楽しみに待とう。
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