2017年9月29日金曜日

第159回 質量分析関西談話会を行います!

第159回 質量分析関西談話会

日時:
2017年12月2日(土) 13時30分~17時45分(受付開始13時15分)
会場:
神戸薬科大学4号館K430教室
(〒658-8558兵庫県神戸市東灘区本山北町4丁目19番1号)
交通アクセス:http://www.kobepharma-u.ac.jp/guid/guid_06.html

主題:「質量分析技術の最新動向」&「MSのご機嫌のとりかた」
質量分析技術をもとに新たな蛋白質研究領域を開拓されておられる大阪大学の内山 進先生より水素重水素交換質量分析法の基礎と応用をご紹介いただきます。また、大阪大学の戸塚善三郎先生より、質量分析の持病の一つであるマトリクス効果について、前処理からHPLC分離・MSまでのトータルソリューションの話題提供をいただきます。
さらに今回はMSの初心者および玄人向け企画として、「MSのご機嫌のとりかた(仮)」について討議を行いたいと思います。MSのご機嫌を上手にとるにはどうすればいいか悩む初心者の皆様、いろいろあってやや倦怠期気味の玄人の皆様の間で情報とノウハウ交換を行い、いいデータがたくさん出るきっかけとしたく思います。各講演の後半には質疑応答時間を十分に取っていますので、ぜひこの機会に日頃から抱いておられる疑問等をお持ちいただき、当会を十分に活用していただければと思います。
 多くの皆様のご参加をお待ちしております。

講演プログラム:
「質量分析技術の最新動向」
内山 進(大阪大学):「水素重水素交換質量分析の蛋白質研究における利用」
戸塚善三郎(大阪大学):「マトリックス効果対策のノウハウ ~前処理からHPLC分離・MSまでのトータルソリューションを目指して~」
 
特別企画「MSのご機嫌のとりかた(仮)」
武庫川女子大学の堀山先生、大阪薬科大学の藤嶽先生、奈良先端大学院大学の西川先生、阪大の戸所先生、三宅先生より話題提供いただきます。
 
参加費:無料
講演終了後、Post Meeting with Beer & 10 Million $ Night View(懇親会)を予定しております。懇親会に参加される方は当日会場にてお志を集めさせていただきます。

参加申込み:参加希望の方は、(1)氏名、(2)所属、(3)メールアドレス、(4)日本質量分析学会
会員/非会員の別を添えて、下記メールアドレスにお申し込みください。
kansai17_%_mssj.jp (送信の際は、_%_を@に変えてください)
関西談話会世話人代表 松田史生(大阪大学)

世話人:竹内 敦子(神戸薬科大学)、三宅 里佳  (大阪大学)、黒野 定 (和光純薬工業)、吉野 健一(神戸大学)、松田 史生 (世話人代表、大阪大学)

2017年9月28日木曜日

中心代謝を理解するために定量データから学べること

中心炭素代謝経路は、糖などの炭素源を酸化的に分解してエネルギーを獲得しつつ、細胞構成要素の生合成前駆体を供給する全生物共通の基幹システムです。経路を構成する代謝物、酵素、遺伝子の有機化学、生化学的、分子生物学的検討は20世紀中にほぼ完了し、教科書レベルの知見となっています。すなわち解糖系10反応のうち不可逆(ΔG’ << 0)なのは、ヘキソキナーゼ(HXK)、ホスホフルクトキナーゼ(PFK)、ピルビン酸キナーゼ反応であり、解糖系代謝フラックスの制御にはPFKが重要な役割を果たしていること、筋肉ではPFKのアロステリック制御や基質サイクルが秒単位での代謝制御を担う点は、生化学のイロハの一つといえるでしょう。また最近になって、インシュリンに対する肝臓細胞の分単位での代謝応答時にPFKのリン酸化による活性調節が起きること、さらに解糖系の反応速度を維持するために、代謝酵素の発現量が高いレベルにあることが明らかにされています。そこから、中心炭素代謝フラックスの調節はアロステリック制御やリン酸化がメインであり、酵素発現量はマイナーな役割しかないというイメージが描かれている?かもしれません。
一方、最近になってがん悪性化や免疫細胞機能分化と、エネルギー代謝すなわち中心炭素代謝フラックスの変化との関連が注目されるようになっています。また、近年活発化している代謝工学分野では、微生物の酵素発現量の改変を通じた、中心炭素代謝フラックスの人為的切り替えを目指している。その理解と応用に必要な代謝調節機構を明らかにするには、定量データをもとにした解析が必要です。そこで現在得られる代謝に関する定量データのいい点悪い点を比較した総説を書きました。この総説のウリは図1です。


  • 培養細胞の比増殖速度の計算法を実例付きで紹介している。
  • 細胞内外の物質収支を推計するためにもっともよい指標となる比グルコース消費速度、比乳酸生産速度の計算法を実例付きで紹介している。

という培養細胞+代謝マニアックな方必見の内容になっておりますのでぜひご参考にしてください。

Fumio Matsuda, Yoshihiro Toya and Hiroshi Shimizu
Learning from quantitative data to understand central carbon metabolism
Biotechnology Advances, in press


2017年9月18日月曜日

Let’s noteでWQHD

最近の27インチサイズの液晶モニタは解像度がWQHD(2560x1440)だったりします。EIZO の FlexScan EV2750にレッツノート CF-SZ6 (Intel HD graphics 620)を繋ぐ機会がありました。
普通にHDMIでつなぐと1920*1200までしか選ぶことができません。4KモニタにはHDMIできちんと出力できるのだからこれはおかしいと思い、デスクトップで右クリック =>インテルグラフィックスの設定=>ディスプレイ=>カスタム解像度で2560x1440、リフレッシュレートを59にすると帯域幅が足りないと怒られますが、リフレッシュレートを45に減らすと無事WQHDで出力できました。エンジンの馬力と広い画面は、、と言いますが、とっても快適です。試される方は自己責任でお願いします。


2017年8月21日月曜日

第158回 質量分析関西談話会プログラム確定!

第158回 質量分析関西談話会のプログラムが確定しましたのでご連絡します。


今回のテーマは

質量分析機器メーカーの技術を学ぶ (III)&「かんたんMSの作り方」

をテーマに実施いたします。九州大学の馬場健史先生自ら「超臨界流体クロマトグラフィーを用いた代謝物分析」と題してレクチャーいただけることになりました。
また、今回は特別企画として、大阪大学の青木順先生よりMS自作派待望のご講演「かんたんMSの作り方」をお願いしております。 全国3000万の超臨界、表面分析マニア、マス自作派、藤戸派の皆さんはもちろん多くの皆さんでお誘いあわせの上、ご参加のほどどうぞよろしくお願いします。


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158回 質量分析関西談話会

日時:
201792日(土) 1330分~1755分(受付開始1315分)
会場:
島津製作所関西支社マルチホール (会場定員60名)
大阪市北区芝田1-1-4
大阪梅田 阪急ターミナルビル14
JR大阪駅ホーム北側に隣接するビルです。阪急17番街のエレベータで14階までお越しください。)
電話06-6373-6522
交通アクセス:http://www.shimadzu.co.jp/aboutus/company/access/kansai.html
主題:
質量分析機器メーカーの技術を学ぶ (III)
 大変好評を頂きました「質量分析機器メーカーの技術を学ぶ (I)(II)」に引き続き、今回は「質量分析機器メーカーの技術を学ぶ (III)」&「かんたんMSの作り方」として、アルバック・ファイ株式会社、株式会社島津製作所様より、各メーカーの得意とする表面分析及び超臨界流体クロマトグラフィーについて原理から分かりやすくお話しいただきます。また、九州大学の馬場健史先生より超臨界流体クロマトグラフィーを用いた代謝物分析について、これまでの開発の歴史と展望についてご紹介いただきます。さらに今回は特別企画として、大阪大学の青木順先生よりMS自作派待望のご講演をいただけることになりました。各講演の後半には製品や技術に対します質疑応答時間を十分に取っていますので、ぜひこの機会に日頃から抱いておられる疑問等をお持ちいただき、当会を十分に活用していただければと思います。
 多くの皆様のご参加をお待ちしております。
講演プログラム:
馬場 健史(九州大学):「超臨界流体クロマトグラフィーを用いた代謝物分析」
藤戸 由佳(株式会社島津製作所):「超臨界流体クロマトグラフと質量分析計の接続」
眞田 則明(アルバック・ファイ株式会社):「表面微小部分析を実現するイメージング質量分析法:TOF-SIMS
特別企画
青木 順(大阪大学):「かんたんMSの作り方」

参加費:
無料
講演終了後、簡単な懇親会を予定しております。懇親会に参加される方は当日会場にてお志を集めさせていただきます。
参加申込み:
参加希望の方は、(1)氏名、(2)所属、(3)メールアドレス、(4)日本質量分析学会
会員/非会員の別を添えて、下記メールアドレスにお申し込みください。
kansai17_%_mssj.jp (送信の際は、_%_@に変えてください)
関西談話会世話人代表 松田史生(大阪大学)
世話人:
川畑 慎一郎(島津製作所)、黒野 定 (和光純薬工業))、松田 史生 (世話人代表、大阪大学)


2017年7月28日金曜日

貴重なマススペクトル

現在MassBank等で収集されているマススペクトルデータには、化合物群に偏りがあります。
植物二次代謝物では、フラボノイド、桂皮酸エステル類のデータが充実しています。標準化合物の入手が容易なため、フラグメンテーションのメカニズムも詳細が明らかになっており、「高品質なデータ」を選んで帰属したり、選抜したりする必要がもはやありません。
一方、それ以外の多くの化合物グループは、標準化合物の入手が困難なため、マススペクトルデータが極端に少なく、文献記載のデータがまれにあるという状況です。このような「レア物件」はこれまでの議論でいう「高品質なデータ」に該当しないことがほとんどですが、「化合物同定を進める」ための貴重な情報源になっています。
このため、「代謝物の同定を目的」として「高品質なデータ」を選抜する必要性は現時点でほとんどありません。分析屋が労を割くべきは、「データの信頼性を評価する方法の開発」と、「高品質なレア物件データをどのように収集していくか」にあります。

2017年7月25日火曜日

人工的なマススペクトル

発見型プロテオミクスの成功に貢献した技術基盤の一つが、ペプチドのフラグメンテーションルールに基づく、人工的なライブラリの作成法にあることは間違いありません。したがって、人工的なライブラリの作成技術が今後のマススペクトルデータを用いた代謝物構造推定に重要な役割を果たすとおもわれます。ただし、ペプチドのフラグメンテーションルールのような、簡単なルールですむ化合物がリピド以外にあるのかはわかっていません。リピドが成功した理由は、アグリコンに相当する主骨格部分(=フラグメンテーションが複雑)がない点にあります。

プロテオミクスから学ぶべきはもう一つのポイントは、同定結果の品質管理法です。初期プロテオミクスでは、緩めの閾値で同定数を競うナンバーゲームとなり、後に、そのほとんどが誤同定だったことが明らかになっています。逆配列のデコイ(偽)データベースを利用した誤同定率の推定法が開発され、発見型プロテオミクスのもっとも重要な技術基盤の一つとなっています。いまのところ、代謝物のマススペクトルのデコイデータベースの作成法や、マススペクトルの類似性のp値の計算法など、品質管理が可能な検索方法には大きな進展がありません。このような研究開発の基盤として、MassBankデータセットが果たす役割は大きいと思います。
したがって、人工的なライブラリを作成は、同定結果の品質管理法をどうするのかという問題とセットになっており、むしろ後者のほうが重要であると考えます。

他にも人工的なライブラリを作成する場合

  • 化合物IDも一般名もない化合物の人工マススペクトルデータにヒットしたとして、その化合物を何と呼べばいいのか? 
  • 異なる構造の化合物から、同じ人工スペクトルが生成しうる。そんなデータにヒットしたとして、その化合物を何と呼べばいいのか? 

などの論点があります。楽しい話題ですが、またの機会を待ちたいと思います。

2017年7月22日土曜日

品質の良いマススペクトルとはなにか?

マススペクトルの議論では下記2点を分けて考えたほうが生産的です。
(1) 物理化学特性データとしてのマススペクトル
(2) 構造情報としてのマススペクトル

品質については、実験科学である以上、再現性という観点(のみ)が重要です。

物理化学特性データとしてのマススペクトル

物理化学特性データとしてのマススペクトルとは、融点やIRスペクトルと同じく、化合物の特性を示すデータです。化合物の調製、単離からマススペクトルの取得に至る方法が、論文に記載されることで再現性が担保されています。この方法で天然から単離した、合成して単離したこの化合物サンプルから、正しく校正された装置でマススペクトルを取得したら、こういうマススペクトルが得られた。という事実に価値があります。同じ手順を踏んで、化合物を調製し、同一の条件でマススペクトルを取得したら(不純物由来の夾雑シグナル等が含まれる可能性があったとしても)同一のデータが得られるはず。という再現性が、マススペクトルの一致を根拠とした化合物同定を可能とします。

したがって、再現性の良いマススペクトルであるかどうかを判定するには、
①正しく校正された装置、条件で取得されたことを担保する情報が必要
これをデータそのものから読み取るには、
※ピークの形状が良い(profileの対称性が良く、重心が真ん中)。
※容易に帰属可能なシグナル(いわゆる分子イオン[M+H]+, M+等)のm/z値が理論値と一致していること(どのくらい一致していたらいいかは後に議論します)。
が根拠になりえます。

②再現性と不純物
1回だけ取得したマススペクトルのシグナルに、不純物由来の夾雑シグナルやノイズが含まれるか判定する方法はありません。異なる由来の同一化合物から取得した複数のマススペクトルで共通して再現性良く観測されるシグナルが、その化合物由来である。と考えるのが妥当でしょう。
したがって、再現性の良いスペクトラムが1つだけある、という状況は考えにくいです。
異なる由来の同一化合物から(できれば異なる研究室や装置で)同一条件で取得した複数のマススペクトルが冗長に存在し、その上で、再現性の高いシグナルが多く含まれる信頼性の高いマススペクトルが判明する。という理路をたどっています。
さらに、厳密にいうと、再現性の高いシグナルが本当に化合物由来かどうかはわかりません。次に取得したデータでは再現せず、夾雑物由来のシグナルであることが判明する可能性があります。となると、再現性の良いスペクトラムというのは、現時点の仮説であって、以降の検証のためにも、冗長なマススペクトルの存在が重要です。
もっというと、冗長なマススペクトルの中に、ノイズや、夾雑物がふくまれるものが含まれていても問題ありません(冗長だからエラー校正ができる)。低品質なデータにもそれなりに使い道があるという点を強調したいと思います。

まとめ
化学者にとって、重要な物理化学特性データとしてのマススペクトルとは、信用できるデータのことです。

  • きちんと校正された装置で取得したかどうかあとから検証可能になっていること
  • 再現性をあとから検証するために、事実としてのスペクトルを多数集積されていること。

が大事であると思います。現在のMassBankがいいのは、一部データが冗長に収集されているため、上記のような検証が可能な点です。玉石混交であってもいろいろあることに事実として価値があります。
データの信用とは、理屈に合う合わないではなく、再現するかしないかのみにあります。どんなに理論に合わなくても、再現して観測されるシグナルがあれば、理論を修正するべきです。
事実としてのスペクトルのうち、現時点で最も信頼性が高いと考えられるものを指定することができます。しかし、将来的には間違いである可能性は排除できません。一方、「高品質」である。という主張は上記手続きとは関係がないため、化学者としてあまり関心がありません。

構造情報としてのマススペクトル

m/z値=>組成式を推定=>フラグメント構造に帰属する、という作業を実施する際に、精密質量電荷比データがあると、組成式の推定が容易(候補が減る)となります。MassBankにはOjimatrixという、組成式帰属情報が収集されており、宝物のようなデータとなっております。帰属結果からは部分構造に関する情報が読み取れる場合があります。ただしOjimatrixでもすべてのフラグメントイオンが帰属できたわけではなく、本当に正しいのかについては検証が常に行われ続けるべきであると思います。
m/z値から組成式を推定する際、m/z値と理論値とのずれをどこまで許容するか、という閾値を設定する必要があります。妥当な閾値は、精密質量電荷比の実測値のばらつきの標準偏差 S の2.5-3倍です(2倍では5%のシグナルでミスが生じると期待されます。)。したがって、構造情報として有用なマススペクトルの必須条件の1つは

  • 質量電荷比の実測値のばらつきの標準偏差が正確に既知であること

となります。現時点でこれを満たしているデータはMassBankにも1つもありません。
そのうえで

  • 閾値が1 - 5 ppm以内

であれば、プロダクトイオン、およびニュートラルロスの組成式を一意に推定できる可能性が増えます。ただこれは情報量が多く、便利なのであって、情報の質や信頼性とは関係がない点には注意が必要でしょう。ユニットマスのマススペクトルからでも有益な構造情報をえることは可能です。m/z値から組成式を推定が推定できると、誤差を含む数値データからおさらばして、記号化できます。
さらに、

  • フラグメントイオンが化学構造とユニークに関連づけることができるのに充分な数だけ観察されている≒できるだけ多くのプロダクトイオンが観察される

のも情報量が多く便利ではありますが、情報の質や信頼性とは関係がなく、分けて議論すべきだという点に注意を払うべきです。
できるだけ多くのプロダクトイオン情報を収集するという観点からは、コリジョン電圧を走査するRampモードでデータを取得する、とか、複数のスペクトルを合成するとか、MSnのイオンツリーとか、正規表現といった、いろいろな抽象化のアイデアが出てきます。物理化学特性データとしての事実としてのスペクトルではもはやありませんので、抽象化した「構造情報としてのスペクトル」として別に考えるべきでしょう。
たとえば、cDNA解析では同一mRNA由来のcDNAの冗長なリードから、mRNA全長配列の再構成がおこなわれました。サンガー法のエレクトロフェログラム(数値データ)から、ショートリードの配列(ATGC..)に記号化され、配列情報を再構成した仮想的、抽象的な全長配列が再構成されます。さらに配列情報の取り扱い方法が確立しており、信頼性評価が可能です。

これと同様に、複数の「物理化学特性データとしてのマススペクトル」から、組成式に記号化し、さらに再構成して抽象化した「構造情報としてのマススペクトル」を作成しようとしている。と考えることができます。
この場合は、「構造情報としてのマススペクトル」に含まれるフラグメントイオンの情報の信頼性は、できるだけ多くの「物理化学特性データとしてのマススペクトル」で再現性良く観測されること、に依存します。これを実現するには、「物理化学特性データとしてのマススペクトル」は冗長であることがとにかく重要です。
また、「構造情報としてのマススペクトル」の信頼性の評価法が必要です。この部分は現在研究段階にあり、研究を進めるには「物理化学特性データとしてのマススペクトル」がじゃぶじゃぶある。という状況を作るべきです。
現在のマススペクトルに関する誤謬の一つは、「物理化学特性データとしてのマススペクトル」の決定版が1つだけあり、そこからすべてが読み取れるというものです。GC-MSがそれにやや近いため生まれた誤謬であると思います。

他にも構造情報としてのスペクトルでは、

  • 帰属済みのシグナルのm/zは組成式で記述すべき
  • 構造情報としてのマススペクトルをどのように記述すればいいのか
  • スペクトルの分解能とでもいえる品質評価法がありえるのではないか

などの論点があります。またの機会に。

まとめ
構造情報としてのマススペクトルという観点から、広く公開されている情報は、MassBankのOjimatrixデータのみであるといえます。Ojimatrixデータの充実、信頼性の向上が、化合物同定のための品質向上につながります。一方、貴重なOjimatrixデータのうち、低品質なものを落とすとことにどれだけ意味があるのか不明ですが、もったいないというのが率直な感想です。
現状のOjimatrixデータは「物性情報としてのマススペクトル」を一部記号化した、注釈として位置づけられています。そこから抽象化の進んだ「構造情報としてのマススペクトル」はMassBankにはまた存在していません。存在しないものについて高品質であるかどうかは議論できません。また、信頼性=再現性=冗長性なので、現時点でできるとことは、データを収集、充実、整理していくこと以外にありません。