2017年7月28日金曜日

貴重なマススペクトル

現在MassBank等で収集されているマススペクトルデータには、化合物群に偏りがあります。
植物二次代謝物では、フラボノイド、桂皮酸エステル類のデータが充実しています。標準化合物の入手が容易なため、フラグメンテーションのメカニズムも詳細が明らかになっており、「高品質なデータ」を選んで帰属したり、選抜したりする必要がもはやありません。
一方、それ以外の多くの化合物グループは、標準化合物の入手が困難なため、マススペクトルデータが極端に少なく、文献記載のデータがまれにあるという状況です。このような「レア物件」はこれまでの議論でいう「高品質なデータ」に該当しないことがほとんどですが、「化合物同定を進める」ための貴重な情報源になっています。
このため、「代謝物の同定を目的」として「高品質なデータ」を選抜する必要性は現時点でほとんどありません。分析屋が労を割くべきは、「データの信頼性を評価する方法の開発」と、「高品質なレア物件データをどのように収集していくか」にあります。

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