2018年10月21日日曜日

もしも生体成分分析専用HPLCがあったら1

HPLCとは高速液体クロマトグラフィー High performance liquid chromatographyのことです。バイオ分析では、生体中代謝物を抽出してサンプルを作ります。HPLCはサンプル中の個々の代謝物の分離を担当します。代謝物を分離すると、個々の代謝物の定量が容易になります。HPLCでは、個体の粒子(固相)を詰めたカラム(管)に、溶媒(液相)に溶けた試料を流します。すると、固相との相互作用の弱い化合物は早くカラムから流出し、相互作用の強い化合物は遅くカラムから流出します。これにより、化合物を分離することができます。HPLCが今後もバイオ分析の中核を担う分離技術であることは明らかです。ので、もし、生体成分分析専用HPLCがあったら、妄想してみました。

1.なにはともあれバイオイナート

HPLCは液相が触れる部分はおおよそ
・ステンレス鋼材(SUS)の部品、配管
・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の配管
でできています。このうち、ステンレス鋼材にはアニオン性の化合物が吸着し、ピーク形状が悪化する原因になるといわれています。アニオン性の化合物はバイオ分析のもっとも大事な測定対象が多く含まれています。
現状のHPLCはバイオ分析用に作られているとは全く言えません。
PEEKにもいろいろくっつくようですが、なにはともあれステンレス鋼材(SUS)を流路から排除する必要があります。また、ステンレス鋼材から金属イオンが溶け出す(水は最強の溶媒)とも言われており、溶け出した金属イオンが、アニオン性の化合物と相互作用したり、イオン化抑制を起こしたりするといわれています。

となると、ステンレス鋼材を使わず、生物不活性(バイオイナート)素材でHPLCシステムを構成することが、バイオ分析の第一歩になります。これには、

1.バイオイナートのHPLC装置、セミミクロ、ミクロ、ナノスケール
2.バイオイナート素材のカラム、トラップカラム、プレカラム、カラムホルダー
3.バイオイナート素材のバルブ。セミミクロ、ミクロ、ナノスケール用
4.LC-ESI-MSではESIイオン源のスプレーニードル
5.メタルフリーの水、メタノール、アセトニトリル、ギ酸、

が必要です。

1.については、すでにバイオイナート化されたセミミクロスケール用のHPLCが、国産だと島津製作所をはじめ、各社から市販されています。SUSをセラミック、チタンやPEEKに変更した装置です。ただ、バイオ分析の主戦場となると思われる、ミクロスケールの装置たなると、まだまだこれから、という状況です。ナノスケールはAMRさんとかに聞くといろいろありそう。
2.カラム管の内壁をガラスコートしたバイオイナートカラムもSGECERIなどから、セミミクロスケール+C18の組み合わせで、出始めています。どうもフリット部分がむつかしいようです。今後は、ミクロ、ナノスケール用のカラムでもバイオイナート化が進み、さらに、トラップカラム、プレカラム、カラムホルダーがでてくると完璧ですね。また、CERIさんカラムの管に、このメーカーの固相を詰めたい!などのわがままなユーザー向けのカラム充填サービスが登場すると嬉しいです。
3.もバイオイナートバルブがアジレントからが出しています。探せはいろいろありそうです。
4.SUSに接する部分を極力減らしたものが、ABSciex用に市販されております。作ることはできるようなので、各社出そろうといいですね。
これらの対策のご利益はCERIさんがテクニカルレポートとしてまとめておられ、やはり、ピーク形状の改善に効果があるみたいです。

とりあえず、バイオイナート化をすすめましょう




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