2015年7月8日水曜日

ノンターゲットメタボローム分析の課題その14 Metabolite featureとしてのトリプトファンをどのように記述するか?

Metabolite featureの記述法を統一しないと混乱が生じます。2つのスタディで取得したメタボロームデータの、同じMetabolite featureが、スタディ間で別の名前になっていたら(別々の記述子で指し示されたら)、かなり残念なことになります。特に、パスウェイへの投影とか、統合解析が困難になるのは言うまでもありません。さらにめんどくさいのは、化合物の表記法をCASやInChIKeyに統一すればよい、という問題ではない点に、よく注意を払う必要があります。たとえば、普通のメタボローム分析で、Metabolite feature MFID0001がトリプトファンと同定されたとき、MFID0001とは、D-トリプトファンとL-トリプトファンが未知の割合で混合したものであると考えるのが普通ですよね。生体中には、D-トリプトファンが一定の割合で存在し、通常の分析はD体とL体を分離できないからです。このとき、L-トリプトファンや、D-トリプトファンのCAS番号やInChIKeyは不適切ですよね。あとラセミ体のトリプトファンのCAS番号やInChIKeyも不適切であります。このように、単独の構造を指し示すCAS番号やInChIKeyがMetabolite feature の記述子として適切ではない場合があり得る、というのがややこしいのです。
通常われわれが、このピークをトリプトファンと同定したという場合、そこで、指し示しているのは、「D-トリプトファンとL-トリプトファンが未知の割合で混合したもの」である以上、それを指し示す記述法を作るしかありません。遺伝子の機能はオントロジーを作ることで、整理することが可能となりました。このように、化合物オントロジーとしての「トリプトファン」があれば便利そうです。「トリプトファン」とは、アミノ酸および芳香族アミノ酸に包含され、D-トリプトファンとL-トリプトファンを包含するオントロジーとして定義されていればよい。つまり、Metabolite featureの記述を行うには化合物オントロジーシステムの存在が前提となります。

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