2017年3月2日木曜日

ターゲットプロテオーム解析をはじめるノウハウ

日本プロテオーム学会会誌に大変僭越ながら「ターゲットプロテオーム解析をはじめるノウハウ」という一文を寄稿しました。ターゲットプロテオミクスはいま非常にお買い得な技術だと思いますので、みなさまの研究にお役に立てば幸いです。

2017年2月28日火曜日

出芽酵母中心代謝ターゲットプロテオミクス

中心代謝制御メカニズムの解明を目指しています。代謝物を測定するメタボローム分析や、代謝の流れを測定する代謝フラックス解析も大事なのですが、代謝反応を触媒する酵素タンパク量の定量データも負けず劣らず重要です。細胞内代謝の流れを変えたいとき、酵母は、酵素の発現量の調節、あるいは翻訳後修飾の調節を通じてそれを実現しているはずですが、実際のところどうなっているのか、わかっていません。
そこで、出芽酵母をつかって調べてみました。

Matsuda F, Kinoshita S, Nishino S, Tomita A, Shimizu H (2017) Targeted proteome analysis of single-gene deletion strains of Saccharomyces cerevisiae lacking enzymes in the central carbon metabolism. PLoS ONE 12(2): e0172742. 

中心代謝酵素遺伝子が欠損するとその機能を埋め合わせるために、他の酵素発現量も変わるはずです。そこで、出芽酵母中心代謝酵素遺伝子欠損株30株を選んで、対数増殖期の酵素発現プロファイルを定量プロテオーム法で調べました。
定量プロテオーム法というのは、事前に決めたターゲットタンパク質の発現量を液体クロマトグラフ―トリプル四重極型質量分析装置で測定する手法です。今回は、110酵素の発現量が測定できました。その結果から、下記のような仮説が検証できます。

仮説1秘孔説:全体の代謝フラックス分布を制御する秘孔のような反応があり、その発現量制御が効いている。
生化学の教科書を見ると、解糖系はヘキソキナーゼ。、ホスホフルクトキナーゼ、ピルビン酸キナーゼのギブス自由エネルギー変化ΔGが大きく、とくにホスホフルクトキナーゼが律速点あるいは秘孔。あとは、ΔGがゼロに近いから、制御には関係なし。と書いてあります。が、1遺伝子破壊株ではさすがに、いろんな酵素の発現量が増えたり減ったりする傾向がありました。また、ホスホフルクトキナーゼの発現量変化と増殖などに全然相関がなく(論文では述べてませんが)、仮説1は違うみたいです。
また、同じ機能を持つ酵素(アイソザイム)が2種類以上あって1つだめでももう1つが発現して、機能補完しているという話もあります。調べてみると一つHxk1がhxk2Δ株で、 Idh2がidh1Δ株で、Tkl2がtkl1Δ株で、Pdc5がpdc1Δ株で特定敵に発現していました。なぜこの酵素群にはこういう制御がいるのか、がよくわかりません。
また、一部の変異株では、なぜかわからないけど特定の酵素が強発現する例、というのが見つかりました。Kgd1の発現はhxk2Δ株で例外的に増加しました。がその理由は謎です。

仮説2一括制御説:複数の酵素発現量が一括して増減する協調制御がある。
10年前くらいのマイクロアレイ全盛期に、マイクロアレイデータをかき集めて、遺伝子発現の相関ネットワークを作ると、解糖系酵素遺伝子が共発現モジュールになる。というような話がありました。30株のデータで酵素タンパク発現量の相関ネットワークを作ると、
・Gcr1/2p配下の解糖系酵素群
・Msn2/4p配下のトレハロース代謝系酵素群
がモジュールを形成していました。全体の変動の3割くらいがこれで説明できました。

仮説3翻訳後修飾説:発現量は些末な問題で、むしろ翻訳後修飾が重要。
これは調べていないのでよくわかりませんが、酵素発現量も大きく変化していたことから、発現量の制御が些末である。という証拠は今のところありません。

仮説4リソース限界説:酵素発現量を決めるのは、タンパク合成に使えるリソースが律速になっている。
中心代謝酵素は発現量が非常に多いことでしられています。これは解糖系のように代謝フラックスが非常に大きい経路で、可逆反応が平衡に達するためには大量の酵素触媒が必要だからである。と言われています。そこで、各酵素タンパク質の発現コピー数の文献データもとに見積もると
・1遺伝子欠損株では、酵素タンパク総量が増加する=>余分なリソースを利用して欠損遺伝子の機能を補おうとしている。
・が、増えるといっても1割強くらいまで=>使えるリソースが無限あるわけではない。限られたリソースをやりくりしつつ、代謝恒常性の維持に割り振っている様子が垣間見られました。

メタボロ研究者がプロテオをやってみた。という事実上のプロテオミクスデビュー論文であります。いろいろ酵素発現量が変化することが見れて非常に楽しく研究できたのですが、酵素発現量変化が代謝フラックスなど他のパフォーマンスにどのように寄与するのかまでは、全く手が届きませんでした。調べれば調べるほど謎が出てくるので、中心代謝にメロメロです。
なんだか、これまた謎の論文を書いてしまったと思うところ多数でありますが、今後はプロテオミクスを加味したトランスオミクス的アプローチで中心代謝の謎に迫っていきたいと思います。


また本研究では、島津製作所製ナノLCMS+トリプル四重極型LC-MS/MSのLCMS-8040が大活躍しました。特に、LCMS-8040の高速スキャン性能(300 ch/secは十分使える)がターゲットプロテオミクスを進めるにあたって、非常に有効でした。また、カラムはCERI、イオン源はAMR社製、スプレーヤーはFortis tipとオールジャパンの装置の優れた性能のおかげで十分世界と戦えるデータを出せたと、みなみなさまに感謝する次第であります。


本研究はひとえに当時技術補佐員だった富田淳美さんのスーパーテクニックによるものであります。また、定量プロテオミクス解析を実施するにあたって島津製作所の平野一郎様、小倉泰郎様から多大なるご支援いただきました。また、東大の黒田研の皆さまからは様々なご助言をいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。



2017年1月31日火曜日

非ODSミクロナノLCカラム

思うところがあって調べてみた。

ABSciex 

http://sciex.jp/Documents/brochures/microNano_columnspart-list.pdf
cHiPLC column, 2.7 μm, HALO Fused-Core HILIC, 90A, 15 cm x 75 μm

Advanced-materials-tech

http://www.advanced-materials-tech.com/

HALO

ミクロなら
C18, C8, phenylhexyl, PFP, ESCN RP-amide, HILIC Penta-HILICのうち
PFPナノカラム有
98218-609 2.7μm 90A HALO PFP 0.1mm x 100mm
ガードカラムも有
92812-109 2.7μm 90A HALO PFP 2.1mm x 5mm Guard Column
92813-109 2.7μm 90A HALO PFP 3.0mm x 5mm Guard Column
92814-109 2.7μm 90A HALO PFP 4.6mm x 5mm Guard Column
イケる!

CERI

http://www.cerij.or.jp/service/09_chromatography/L-column_01.html
L-column
L-column2 ODS C8 C6-phenyl ならミクロLC,ナノLC有り。


Shimadzu GLC

Mastro
433-23210 Mastro PFP 100 2.1 3
426-75210 Mastro SP 100 2.1 5

カラムサイズのバリエーションが広がり、ガードカラムがあるとうれしい。


TCI東京化成

http://www.tcichemicals.com/ja/jp/product/chromatography/hplc/primsep.html
mix mode ナノカラム有り

SIELC社製品の代理店
http://www.sielc.com/
0.5 mm, 1.0 mm, 2.0 mm
http://www.sielc.com/wp-content/uploads/2015/11/SIELC_Obelisc_Intro.pdf
サイズは何でもあり。

ミックスモード(ODS+イオン交換)カラム TCI Dual / Kaseisorb LC
http://www.tcichemicals.com/ja/jp/product/chromatography/hplc/mgonoc000000saqi-att/TCI_Dual_Technical_Information_jp.pdf

※上記以外のカラムサイズも対応いたしますので,お問い合わせ下さい。
とあるので聞いてみる価値あり。

SGE

Protecol PFP
mix modeなし
C4, C18のみ
内径0.15, 0.3から選べる
PEELコートもいける 
ProteCol PFP  02, 03, 46、SPもあり。PEEKコートのPFP有り

以降調査中、選択肢が増えるといいな



古代史

デスクトップにこういうファイルが落ちていたので、こちらにコピペして消去。
やっぱ五世紀の倭の五王の時代が謎ですな。

紀元前
221 秦成立
202 漢成立
0
107 後漢書 和国王が奴隷を貢献
2世紀後半 倭国大乱
3世紀 魏志倭人伝
238 なしめ朝献
243 卑弥呼朝献
247 狗奴国の乱
265 晋成立倭王使いを送る
367 百済倭に使いを送る
372 七枝刀をおくる。奈良石上神社
389 讃 即位? 応神帝 宇佐出身の豪族の出身、敦賀に移住した
402 新羅倭に使いを送る
5世紀 河内巨大古墳
413 倭王東晋に使いを送る
421 倭王讃が宗に貢ぎ物
438 倭王珍が宗に貢ぎ物
443 倭王済が宗に貢ぎ物
451 倭王済が宗に貢ぎ物
462 倭王興が宗に貢ぎ物
463 吉備の乱 雄略帝による瀬戸内海啓開
478 倭王武の上表分
479 武へ倭王の称号
このころ 大型古墳衰退
502 倭王の称号、日本海交易ネットワーク=蘇我海運
6世紀 オホド王(継体)が越の国から現れる、即位の19年後都に入った、継体天皇=湖北出身の鉄鋼大財閥当主、九州倭国唐受け継いだ日本海海運業
6世紀 畿内の馬による輸送を開始
527 磐井の乱物部氏による制圧
553 欽明天皇蘇我稲目軍船建造命令に朝鮮出兵
562 欽明天皇朝鮮出兵
570 高句麗越の地を通じて倭国に使いを送る
587 丁未の役、物部氏滅亡瀬戸内海利権の覇権争い
618 唐成立
645 乙巳の変、蘇我滅亡 新羅派vs百済派の覇権争い
660 百済滅亡

2016年12月27日火曜日

Omix Visualization

一次代謝の研究をしていると、代謝物量、遺伝子、酵素発現量、代謝フラックスなどの実測データを代謝パスウェイ上にヒートマップとして可視化したくなります。そこでVANTEDやCytoscapeなどのグラフ(ネットワーク)可視化ソフトウェアを流用して、代謝経路を表示していました。がしかし、もともと、グラフ解析用のソフトウェアなので、代謝経路を取り扱うのには無理がありました。こういうことがしたいんです。

・代謝物ノード間に矢印で反応を表現する。これはグラフ解析用のソフトウェアでできます。
・2基質反応を表現するために、2個のノードとノードを繋ぐ複合矢印を1つのオブジェクトとして取り扱いたいです。これはグラフ解析用のソフトウェアではムリです。
・さらに、酵素、遺伝子発現量を取り扱うために、代謝物ノード間の矢印の横に、さらに酵素、遺伝子発現量を表示するノードをぶら下げたいのです。矢印を動かしたらそのノードもつられて動く。とうのが素敵です。これもグラフ解析用のソフトウェアではムリです。

代謝専用のオブジェクト塗り絵ソフトがあればいいなー。とおもっていたら、ASMSで見つけました。Omix Visualizationです。どうもドイツのフラックス解析の巨匠Wolfgang Wiechertのところで学位をとったDr. Peter Drosteが学位論文?かなにかで作ったソフトウェアをもとに立ち上げたベンチャー企業の製品。のようです。みたところ、これこれ、こいうのがほしかったのと言うのが全部出来る感じなうえに、FBAとか動的モデリングもプラグインで実行できるみたいです。自分でプラグインも作れるらしく、12ヶ月使用権のアカデミックライセンスが189.9ユーロ。。これは自腹で買っちゃて人柱になれってこと?もしすでにお使いの方がおられましたらぜひ、感想などお聞かせ願いたいです。



メタボロミクス集中講義@静岡大学

12/26,27と2日間、静岡大学理学部の瓜谷 眞裕先生にお招きいただき集中講義を開講しました。

講義:メタボロミクス

目的:代謝を包括的に解析するための技術の基礎と応用法を理解する。

内容:メタボロームとは、生体中に含まれる代謝物の総体のことである。メタボロームには遺伝的な要因にくわえ、環境からの影響も反映することから、有用な表現型として活用されている。
代謝物の定量分析に用いる機器分析法の基礎を学び、取得したデータから細胞内代謝を理解するための方法論を学ぶ。


  1. メタボロームとは? 代謝を調べることでどんなことがわかるのか概観します。
  2. 代謝物分離法の基礎 クロマトグラフィーの基礎を学びます。
  3. 質量分析の基礎 質量分析法の基礎を学びます。
  4. メタボロームデータの解析法の基礎 メタボロームデータの解析に用いられる多変量解析の基礎を学びます。
  5. メタボローム研究の実例 メタボローム分析を活用した研究の実例を紹介します。
  6. メタボロームと他のデータをつなげる メタボロームデータを活用した生命現象の理解について議論します。

計20名弱の3年生と4年生が十三ションベン通りを例にしたクロマトグラムの説明に始まり、出芽酵母一次代謝の安定化機構に関する謎解きまで、2日間真剣に参加してくださりました。(静岡土産にすいせんしてくれた「こっこ」は大変美味でした。)
レポートの提出期限はH29/1/7ですので、がんばってください。



2016年11月2日水曜日

技術補佐員募集

松田の所属する大阪大学大学院情報科学研究科バイオ情報工学専攻代謝情報工学研究室では現在技術補佐員の募集を行っています。

募集の詳細

微生物の代謝を質量分析装置を使っていろいろしらべて、低炭素社会の実現に貢献する研究を一緒にがんばってくださる方を大募集中です。機器分析、バイオ研究の経験者、未経験者に関わらず興味のある方はぜひ「募集の詳細」をご確認の上、ご一報いただけますと幸いです。