2018年11月9日金曜日

もしも生体成分分析専用HPLCがあったら4

バイオ分析では、細胞内の内因性代謝中間体の同定と、定量を目指します。内因性代謝中間体の特徴は、親水性が高い点です。アミンだったり有機酸だったりと溶液中でイオン化するアニオン性やカチオン性化合物のオンパレードであります。もともとHPLCに使うカラムは親水性相互作用を使った、順相系のものが使われていましたが、耐久性、再現性に問題を抱えていたそうです。一方、LC-MSの発展を強力に推し進めた薬物動態分野では、薬物や薬物代謝物など、比較的疎水性の高い化合物が分析対象だったこともあり、オクタドデシルシリル基(ODS)でシリカゲル表面を修飾した逆相系のカラムが好んで利用され、塩基性薬剤をシャープに分離できるカラムの開発競争が起きて、ものすごく高性能なカラムが現在市販されるようになりました。また、逆相系は高い耐久性、再現性があり、分析屋さんもこよなくODSカラムを愛してきました。一方、内因性代謝中間体は、逆相系のカラムで分離するには、疎水性が低すぎました。そこで、10年ほど前から、逆逆相とか、HILICという順相っぽいカラムが登場しています。が、どこかのシンポジウムで、「昔あんなに順相がイヤで、逆相に移行したのに、いまさらまた、順相を引っ張り出してくるってどういうこと?」というコメントを聞いたことがありますが、それくらい、逆相系への信頼があつい。のだと思います。

また、内因性代謝中間体には構造異性体が多く、ロイシンとイソロイシンとか、グルコース 6-リン酸、グルコース 1-リン酸とフルクトース 6-リン酸などの糖リン酸ように構造はそっくり。しかも重要な代謝物なので、しっかりと分離しないと分析として使い物にならない。という課題があります。そこで、HILICカラムを使って分離を試みても、標準化合物混合物ではうまく分離できたが、実試料ではピーク形状の悪化がおき、うまく分離できない。と事態が起きます。そうすると、HILICカラムの抱える耐久性、再現性の問題点に対してそれほどメリットがない。ということで、大きなブレークスルーには至っていません。

次に、逆相系カラムをいじって、内因性代謝中間体を保持できないか。というアイデアが出てきます。特にペンタプルオロフェニルペンチル(PFPP)基を導入したカラムで、内因性代謝中間体、特にアミノ酸が保持、分離できる。というのは大きな発見でした(確か味の素の方が12年くらい前に発見されたと思います)。フッ素が5個結合したベンゼン環とカチオン性内因性代謝中間体がどのように相互作用しているのかは謎ですが(π―π相互作用?)、そこそこの堅牢性のあるこのカラムの利用は着実に広がっており、今後のバイオ分析を支える重要技術となっていくと期待されます。あとは、PFPPカラムの需要が高まり、開発競争が起きて、どんどん性能が良くなる。という、勝ちパターンにつながるといいなぁとおもいます。

次なるアイデアとして、ODSに親水性の官能基を導入し、疎水性相互作用と、親水性相互作用の両方で化合物を分離するミックスモードといわれるカラムが開発されました。京都の雄、インタクトが販売しているアミノ酸分析用のカラムは、ロイシンとイソロイシンをばっちり分離し、LC-MSにもつなげるカラムとして、ミックスモードの可能性を示しています。一方、どの官能基をどういうふうに導入すると、糖リン酸をうまく分離できるのかはまだ、わかっていないようです。世のクロマトグラファーの挑戦が待たれます。

次に、移動相をいじることで、内因性代謝中間体の保持、分離の向上を狙うドーピング系のアプローチもあります。たとえは、移動相にEDTAを添加すると、サンプル中、カラム表面の金属イオンとキレートを形成するため、アニオン性の化合物のピーク形状が一気に改善した。というエーザイの小田さんらの報告は(Myint et al. Anal Chem 81(18):7766-7772)、まだまだ、改善の余地があることを示した。ということで画期的でした。ただ、EDTAの添加はLC-MSとの相性が良くありません。同様のアプローチとして、揮発性のacetylacetoneをキレート剤に用いる方法も出てきていますが(Siegel et al. J Chromatogr A 1294:87-97 )効果が微妙なようです。

さらに、メタノール/水/酢酸系に、トリブチルアミンをイオンペア剤として追加し、ODSカラムを使ってアニオン性の糖リン酸を分離する。という手法も登場しました。この方法は、グルコース 6-リン酸、グルコース 1-リン酸とフルクトース 6-リン酸をしっかり分離できるわけではないが、実試料を分析した時の破綻が少ない。ATP、ADP等の多価のアニモンも同時分析可能。ODSカラムの堅牢性を生かせる。等のメリットがある一方、トリブチルアミンは一度使うと洗浄できないので、他のメソッドとの共存がむつかしいという強烈な欠点もあります。われわれは、糖リン酸が測れないとお話にならない。という点と、ラボに古くなって使われなくなった、他の手法との共存を考えなくていいトリプル四重極のLC-MSがたまたまあった。という理由で、トリブチルアミンを使った方法をつかっていますが、だれにでもお勧めできるというものではありません。

また、糖リン酸を抽出後、化学的に誘導体化して分析する。というアプローチもあります。調べた限り、この方法とHPLCでの分離を組み合わせた例はないようですが(あったら教えて、、、)、最近われわれは、糖リン酸類を化学的に誘導体化後、「ガスクロマトグラフィー」で分離できることを示しました。GCやるな。とおもいます。

いずれにせよ、細胞内の内因性代謝中間体を気分よく、分離する技術はまだまだ発展途上です。最近は、薬物動態分野に向けた開発が一段落したようなので、これからは、バイオ分析に注力したカラムの開発、分離法の開発が進むことが期待されます。


2018年11月2日金曜日

もしも生体成分分析専用HPLCがあったら3

3.ミクロLCだ!

バイオ分析では微量成分を定量したいので、常に高感度化が課題です。感度に余裕があれは、必要なサンプル量が減らせる。並行して測定できる代謝物が増やせるなど、分析法全体が「ラク」になります。
検出器での感度向上はいい装置を買えばいい。という「お金」の話がほとんどですが、HPLCでの高感度化には知恵でなんとななる部分がだいぶあります。
HPLCの教科書には、カラムを細く(内径を小さく)すると感度が向上すると書いてあります。
100 * 4.6 mmのカラム+1.0ml/minの流量
100 * 2 mmのカラム+0.2ml/minの流量
の2条件で、同量のサンプルを分析し、ある成分が12秒のピーク幅で観測された場合、同じ量の成分が0.2mLあるいは、0.04mLの液相に溶けていたことになります。濃度は後者のほうが5倍高いので、感度が5倍、という理屈です。

ただ、これまでのHPLCとくにLC-MSの構成は薬物動態分野のニーズが色濃く反映していました。
・微量といっても薬物代謝物なので、割とあるからそれほど感度は大事じゃない。
・サンプル数が多いので、ハイスループット分析がしたい。
・セミミクロスケールの内径 2 mmの短めのカラムにサブ2ミクロンの固相を詰めたものを用い、液相を0.2-1.0ml/minくらいの流量に設定するのがいいバランス。流量を上げることでハイスループットな分析に対応できた。
・1.0ml/minくらいまでの流量であれは、ESIのイオン源の進化(ネビュライザガス+超高温の熱風を吹き付けて、蒸発促進)で対応できた。
・セミミクロスケールで要求されるデッドボリュームはそれほど厳しくなく、オートサンプラ等の構成が容易だった。
・ミクロスケール(カラムの内径が0.2 - 0.5mm、 2 - 50microL/minくらい)になると、ミキサー、オートサンプラ、ESIイオン源等をすべて再検討する必要があるが、そこまでして高感度を狙う理由がなかった。
・セミミクロスケールがいい感じ。

また、ナノLC-MSの構成はプロテオミクスのニーズが色濃く反映していました。

・サンプルが微量な場合が多く、より多くMS/MSデータを取得するためには、感度だけが大事だ。
・サンプル数はそれほど多くないので、スループットはあまり気にしない。
・ナノスケールの内径 0.075-0.1 mmの長めのカラムに3-5ミクロンの固相を詰めたものを用い、液相を100-400 nl/minくらいの流量に設定する。のがいいバランス。
・この領域だど、ネビュライザガスなしでESIのイオン化が可能だ。また、あきらかにセミミクロスケールより感度が向上する。
・流量が少ないので、高性能なシリンジポンプのポンプを用いることができた。ミキサーは不要で、ESIイオン源はむき出しで使うことで解決できた。また、ナノLCはどうしても動作が遅く、1分析の時間を短くするのがむつかしい(最低でも40-50分という感じ)が、スループットはあまり気にしないのでなんとかなった。
・ナノスケールがいい感じ。

一方、バイオ分析はわがままな分析です。
・微量の生体成分が測定したいので、感度は大事だ
・サンプル数もわりと多いので、ハイスループット分析がしたい。15-20分くらいのグラジエント分析を回したい。

ので、セミミクロスケールの分析の延長、次のステップとしてのミクロスケールにどうしても興味が出てきます。

これを実現するには

1.ミクロLC でバイオイナート化したもの
2.ミクロLC 用の内径が0.2 - 0.5mmくらいのカラムでバイオイナート化したもの
3.ミクロLC 用に最適化されたESIイオン源

が必要です。ミクロLCはアジレントが昔からラインアップに載せていたりしてあるにはありました。最近になって島津製作所がミクロLCとミクロLC用に最適化されたESIイオン源売り出すなど、いよいよミクロへの移行が実現化しそうです。ミクロLC=バイオ分析用と考えるなら、バイオイナート化が喫緊の課題です。また、ミクロLCはカラムのバリエーションが極端に少なく、これはまだ解決していません。ただSGEなど、もともと受注生産的なメーカーは、いろいろなミクロLC用カラムが使えそうですが、それでも、バイオイナートなカラムは、まだないようです。ミクロLC=バイオ分析用=バイオイナートが標準。
という夢のような時代が早く来るといいな。と思います。

一方、ミクロLCによる感度の向上がどのくらいあるのかははっきりしません。特に注意すべきは、上述の感度向上のロジックはUV検出器などで測定する「濃度」の話だという点です。導入するサンプル量が同じであれは、ミクロスケールでもセミミクロスケールでもMSのイオン源に入ってくる測定対象成分のモル数は同じになります。なので、イオン化効率が100%だったらミクロスケールでもセミミクロスケールでも同じレスポンスが得られるはずです。セミミクロスケールからナノスケールにスケールダウンしても、理論値通りの感度向上にはならないことはよく知られています(理論的には200-500倍くらい上昇するはずが、実際は数十倍だったりする)。ミクロスケールへの移行での感度の向上はほとんどないか、10倍程度くらいになると考えるのが妥当でしょうか(島津のミクロLCを試した先生によると実際に感度は向上したそうです)。
いずれにせよ、ミクロLCが、バイオ分析のフロンティアであることは間違いないでしょう。あと、内径4.6mmと2mmの間に3mmという時代があったように、2mmと0.5mmの間の1mmがブレークしたりしたら楽しい時代になりますね。


2018年10月26日金曜日

もしも生体成分分析専用HPLCがあったら2

2.トラップカラム再興

バイオ分析では、いろいろな成分をふくんだぐちゃっとした試料を取り扱います。事前に、不要な塩、金属イオンや、高分子など極力除く努力が行われますが、なかなか完璧にはできず、めんどくさいなぁとおもいます。このぐちゃっとした試料をHPLC装置に供すると、不要な塩、金属イオンや、高分子などがカラムを通過します。その時に、変な相互作用のせいで、これらの金属イオンや、高分子などが固相の表面にくっつきます。カラムが汚れた状態となるわけです。一応、各分析毎に汚れを除くために溶出力の強い液相を流す「洗い」を行いますが、完ぺきにはきれいになりません。固相の表面が、金属イオンで汚れると、イオン性の化合物の分離が悪化します。とくに2価のカチオンのMg2+のせいで、アニオン性化合物、特にATPやαケト酸のピーク形状が悪化しているようです。ATPやαケト酸は、生体成分として最も重要なものであり、何とかしなくてはなりません。
そこで、オンラインでの固相抽出というイメージで、トラップカラムを再興したいものです。
・グラジエント溶出が大前提。
・トラップカラムに試料をトラップ。脱塩。
・バルブを切り替えて、グラジエント溶出を開始、トラップカラムにトラップされたサンプルが順次本カラムへ溶出されていく。
・分析対象の溶出が終わったら、バルブを切り替える。トラップカラムと本カラムを別個に洗浄する。
・トラップカラムと本カラムを開始状態にコンディショニング。

これにより、本カラムに汚れのもとが通過するのと最低限にできます。

トラップカラムをもちいたバイオ分析を実現するには、
1.バイオイナート仕様のトラップカラム、ガードホルダー。後述するように、ミクロLCを目指すので、サイズは内径1.0mm, 2.0mmくらいのバリエーションが欲しい。
2.トラップカラムにもPFPPなどの多様なケミストリー
3.本カラム用の2液高圧グラジエント用ポンプと、トラップカラム用のポンプ2液分。
4.低デッドボリュームのバルブ

が必要ですね。3.4.お金で解決しますが、1.2.は、カラム屋さんに作ってもらわなくてはなりません。

また、トラップカラムには、いい面と悪い面があります。
Pros セミミクロスケールでの利用を前提に作られたオートインジェクタと、ミクロスケール、ナノスケールの本カラムの間のつなぐ役割ができます。本カラムが汚れにくくなります。
Cons システムが複雑になり、トラブルの原因が増えます。またどうしてもトラップ時に測定対象化合物もロスしてしまうため、トラップカラムが大嫌い。というひとも世の中には多いです。

とくに低分子のバイオ分析では、「本カラムが汚れにくくなる」ご利益が、欠点を大幅に凌駕する可能性があります。チャレンジする価値はあるでしょう。


2018年10月21日日曜日

もしも生体成分分析専用HPLCがあったら1

HPLCとは高速液体クロマトグラフィー High performance liquid chromatographyのことです。バイオ分析では、生体中代謝物を抽出してサンプルを作ります。HPLCはサンプル中の個々の代謝物の分離を担当します。代謝物を分離すると、個々の代謝物の定量が容易になります。HPLCでは、個体の粒子(固相)を詰めたカラム(管)に、溶媒(液相)に溶けた試料を流します。すると、固相との相互作用の弱い化合物は早くカラムから流出し、相互作用の強い化合物は遅くカラムから流出します。これにより、化合物を分離することができます。HPLCが今後もバイオ分析の中核を担う分離技術であることは明らかです。ので、もし、生体成分分析専用HPLCがあったら、妄想してみました。

1.なにはともあれバイオイナート

HPLCは液相が触れる部分はおおよそ
・ステンレス鋼材(SUS)の部品、配管
・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の配管
でできています。このうち、ステンレス鋼材にはアニオン性の化合物が吸着し、ピーク形状が悪化する原因になるといわれています。アニオン性の化合物はバイオ分析のもっとも大事な測定対象が多く含まれています。
現状のHPLCはバイオ分析用に作られているとは全く言えません。
PEEKにもいろいろくっつくようですが、なにはともあれステンレス鋼材(SUS)を流路から排除する必要があります。また、ステンレス鋼材から金属イオンが溶け出す(水は最強の溶媒)とも言われており、溶け出した金属イオンが、アニオン性の化合物と相互作用したり、イオン化抑制を起こしたりするといわれています。

となると、ステンレス鋼材を使わず、生物不活性(バイオイナート)素材でHPLCシステムを構成することが、バイオ分析の第一歩になります。これには、

1.バイオイナートのHPLC装置、セミミクロ、ミクロ、ナノスケール
2.バイオイナート素材のカラム、トラップカラム、プレカラム、カラムホルダー
3.バイオイナート素材のバルブ。セミミクロ、ミクロ、ナノスケール用
4.LC-ESI-MSではESIイオン源のスプレーニードル
5.メタルフリーの水、メタノール、アセトニトリル、ギ酸、

が必要です。

1.については、すでにバイオイナート化されたセミミクロスケール用のHPLCが、国産だと島津製作所をはじめ、各社から市販されています。SUSをセラミック、チタンやPEEKに変更した装置です。ただ、バイオ分析の主戦場となると思われる、ミクロスケールの装置たなると、まだまだこれから、という状況です。ナノスケールはAMRさんとかに聞くといろいろありそう。
2.カラム管の内壁をガラスコートしたバイオイナートカラムもSGECERIなどから、セミミクロスケール+C18の組み合わせで、出始めています。どうもフリット部分がむつかしいようです。今後は、ミクロ、ナノスケール用のカラムでもバイオイナート化が進み、さらに、トラップカラム、プレカラム、カラムホルダーがでてくると完璧ですね。また、CERIさんカラムの管に、このメーカーの固相を詰めたい!などのわがままなユーザー向けのカラム充填サービスが登場すると嬉しいです。
3.もバイオイナートバルブがアジレントからが出しています。探せはいろいろありそうです。
4.SUSに接する部分を極力減らしたものが、ABSciex用に市販されております。作ることはできるようなので、各社出そろうといいですね。
これらの対策のご利益はCERIさんがテクニカルレポートとしてまとめておられ、やはり、ピーク形状の改善に効果があるみたいです。

とりあえず、バイオイナート化をすすめましょう




2018年10月1日月曜日

ロキ古細菌

ここしばらく、アーキアの代謝がマイブームである。真核生物は、アーキアの細胞内に原核生物が共生して、20億年前までには成立したらしい。水素仮説によれば、アーキアのユーリ古細菌門に属するメタン菌(嫌気条件下でメタンを生成しつつ、二酸化炭素と水素から有機物を合成可能)とαプロテオバクテリア(酸素が乏しい環境では発酵によって生き続け、水素と二酸化炭素と酢酸塩を細胞外に排出する)がお互いの排出物を利用しあう相利共生関係を持ち、さらにそれが細胞内共生へと発展したと考えられる。実際有機酸酸化細菌と、メタン菌との共生関係がよく観察されることから、有力な説とされている。一方、真核生物とアーキアが持ち、原核生物が持たない分子メカニズム(アクチン様タンパク、低分子量GTPアーゼなど)に注目し、真核によく似たアーキアを探す試みが最近活発化している。これまでに、ユーリ古細菌とはべつのクレン古細菌のほうが、類似点が多いことが明らかになり、これ以上は培養可能な菌からは見つかりそうにないので、メタゲノム解析データから、ゲノムを再構成するというアプローチがとられている。2015年の論文では、北極海のロキの丘と呼ばれる熱水噴出孔の付近から採取された培養できないアーキアの5,381の遺伝子を含むゲノムがメタゲノム解析から再構築された (Kegg organismにはLokiarchaeum sp. GC14_75としてすでに収録されている)。解析の結果、従来知られているアーキアとは大きく異なること(そこでロキ古細菌門を新たに作った)、系統樹解析からアーキアの中で最も真核生物に似ていることが示された。また、2016にはこの生物が水素に依存しているらしいというか、メタン菌に必要な遺伝子を持つらしいことが報告され、水素仮説と整合があることからも、真核生物とアーキアの間を埋める生物である可能性が取りざたされている。ちなみにKEGGによるとLokiarchaeum sp. GC14_75の再構成ゲノム中には、グルコースから乳酸に至る解糖系が通っているなど代謝屋としても注目ポイントが高い。
この領域はメタゲノム解析+ゲノム再構築という技術をてこに、これからも多くの発見があるだろう。たとえば最近になって、より真核生物に近いとされる「ヘイムダル古細菌」がみつかったりしている。
が、はたしてこの方法できちんとしたゲノムが再構成されているのかについては疑問が多い。例えば、2017年の論文では、Lokiarchaeum sp. GC14_75のゲノムデータで系統樹解析をやり直している。すると、EF2という遺伝子のデータを抜いたら、Lokiarchaeum sp. GC14_75はユーリ古細菌に属するという結果になった、メタゲノム中のアーティファクトによく注意した再検討が必要だろう。と、報告されている。
たしかに、
  • 真核生物の成立は進化の過程で1回しかなかったらしいが、メタン生成菌とバクテリアの共生は現在でも見られる、1回しか起きなかった理由がうまく説明できない。
  • 真核生物にはメタン生成に必要なheterodisulfide reductaseの遺伝子を持つ生物はいないようだ。
というあたりで、メタン生産菌を念頭に置いた水素仮説そのものも再検討が必要だろう。いずれにせよこれらのアーキアの代謝特性が、現在の真核生物の代謝とどのように関連しているのかにはものすごく興味があります。

2018年7月18日水曜日

第161回 質量分析関西談話会プログラム


161回 質量分析関西談話会プログラム
「四重極について学ぶ」

201884日(土) 1500分~1800

島津製作所関西支社マルチホール (会場定員60名)
大阪市北区芝田1-1-4
大阪梅田 阪急ターミナルビル14
JR大阪駅ホーム北側に隣接するビルです。阪急17番街のエレベータで14階までお越しください。)
電話06-6373-6522

四重極質量分析装置は最も広く普及しています。人生ではじめてつきあった質量分析装置が四重極という方は多くおられると思います。また、特に薬物動態分野の歴史は液体クロマトグラフ/トリプル四重極質量分析装置の発展とともにあり、多くの分析屋の相棒として活躍してきた四重極質量分析装置ですが、その原理や、発展の歴史、開発者の思いなどを知る機会は限られています。そこで、今回の関西談話会では、四重極質量分析装置に焦点を当て、原理や、発展の歴史、開発者のみなさまからお話を伺う機会としたいと思います。多くの方のご来聴を歓迎します。


講演プログラム:
15:0015:50:石原盛男氏(大阪大学大学院理学研究科)
「四重極型質量分析装置のしくみ(仮)」
15:5016:40:窪田雅之氏(サーモフィッシャーサイエンティフィック):
「トリプル四重極質量分析装置の歴史」
休憩
17:0018:00:御石浩三氏(島津製作所)
「四重極質量分析装置の開発」

参加費:
無料
講演終了後、簡単な懇親会を予定しております。懇親会に参加される方は当日会場にてお志を集めさせていただきます。

参加申込み:
参加希望の方は、(1)氏名、(2)所属、(3)メールアドレス、(4)日本質量分析学会
会員/非会員の別を添えて、下記メールアドレスにお申し込みください。
kansai17_%_mssj.jp (送信の際は、_%_@に変えてください)
関西談話会世話人代表 松田史生(大阪大学)


世話人:川畑 慎一郎(島津製作所)、黒野 定 (和光純薬工業)、豊田岐聡 (大阪大学)、松田 史生 (世話人代表、大阪大学)

2018年6月13日水曜日

mfapyインストール方法

mfapyインストール方法


180613
200730 改訂

mfapyとはpythonベースの13C-MFAデータ解析用ツールボックスです。大阪大学大学院情報科学研究科バイオ情報計測学講座で開発を進めています。OpenMebius[論文] のPython番という位置づけで2012年ころより開発を開始しましたが、Toolbox化することで大幅に機能を拡張したため、互換性は全くなく、コードベースも別になっています。

変更点

ver 0.5.0
・pyfluxもfluxpyもpymfaもすべて使われていたため、mfapyになりました。
・python3に変更しました。さらにAnacondaの使用を推奨としました。
・python3に対応しないpyOptをあきらめnloptにソルバーを変更しました。また、有効な大域最適化法が見つかりました。
・1スレッドと並列実行のコマンドを統合しました。mfypy.metabolicmodel.MetabolicModel.fitting_flux()など。
・G-indexに対応するため、モデル定義ファイルを拡張しました。
・反応の制約に"pseudo"を追加しました。化学両論行列(フラックス)の計算では無視するが、アトムマッピングでは考慮する反応です。これでG-indexが使えます。
・set_configure => set_configuration などコマンド名を修正しました。
・GitHubにて公開しました。
ver 0.5.1
・炭素数10以上の中間体に対応しました。これにあわせてモデル定義ファイル//Target_fragmentsのフラグメントの表記がGluc_12345からGlu_1:2:3:4:5に変更になりました。付け焼刃感たっぷりです。
ver 0.5.2
・mfapy.mdv.correct_natural_isotope()
・mfapy.mdv.add_natural_isotope()
を追加しました。モデル定義ファイル//Target_fragmentsの5列目に組成式を記述すると、それをもとに、天然同位体比の補正(足す、除く)をやってくれます。
また、試験的に
・mfapy.metabolicmodel.MetabolicModel.set_configuration()

・add_naturalisotope_in_calmdv = "yes"
とすると、MDVの計算時に天然同位体比のを足す補正をしてくれるようにしました。MS/MSデータは未対応なのでご注意を。
ver 0.5.3
・19/06/28 class MdvData: add_gaussian_noise "normalize" option is newly added.
・19/07/01 optimize: def fit_r_mdv_deep add global optimization by "GN_CRS2_LM" before iteration
ver0.55
・19/12/27 All "is" was removed to support Python 3.8
ver0.56
・20/5/17 H0ratio = 0.9893 and H1ratio = 0.0107 were changed in generate_calmdv
・20/5/17 H0ratio = 0.9893 and H1ratio = 0.0107 were changed in set_experiment
・20/5/17 get_degree_of_freedom was corrected. if mode is "ST", number of free metabolites were extracted from degree of freedom
・20/5/17 search_ci in metablicmodel: New input parameter "outputthres" was added
ver0.57
・20/7/12 initializing_Rm_fitting, fit_r_mdv_scipy, fit_r_mdv_nlopt in optimizaton: Expection is newly raised to avoid error in  paralell proceccing
・20/7/13 joblib instead of pp is employed for paralell proceccing
・20/7/30 Format of model definition file was updated to support external with a backward compatibility
・20/7/30 load_metabolic_model_reactions in mfapyio: Support external id
・20/7/30 load_metabolic_model_metabolites in mfapyio: Support external id
・20/7/30 load_metabolic_model_reversibles in mfapyio: Support external id
・20/7/30 load_metabolic_model_fragments in mfapyio: Support external id
・20/7/30 External id data was added to Example_0_toymodel_model.txt
・20/7/30 External id data was added to Example_1_toymodel_model.txt
・20/7/30 show_results in metablicmodel: Output format was modified for more beautiful alignment
・20/7/30 show_results in metablicmodel: "checkrss" option was added to check RSS levels of each fragment and "fitting" reactions and metabolites.

注意点

・まだバグがありそうなので、見つけ次第報告お願いします。

入手

https://github.com/fumiomatsuda/mfapy
からダウンロードしてください。

インストール

1. windowsのユーザー名(フォルダ名)は1 byteアルファベット、スペースなしであることが無用なエラーを防ぐ。
× 松田
× Fumio Matsuda
〇 FumioMatsuda
この例ではFumioMatsuda

2. これまでのpythonをすべてアンインストール

3. mfapyを例えば
C:\Users\FumioMatsuda\mfapy
に置く

4. Anacondaをダウンロード
https://anaconda.org/
の右上のDownload Anacondaをクリック。Sign Upは不要
Python3.6 version, 64 bit versionの最新版をダウンロード
古いバージョンはここから https://repo.continuum.io/archive/


5. デフォルトのままインストール

6. スタートメニューのAnaconda3(64-bit)=>Anaconda Promptを起動
(base) C:\Users\FumioMatsuda>
というコマンドプロンプトが出る。
(base)は現在の環境名
C:\Users\FumioMatsuda>は現在参照しているフォルダのパス
> dir
でフォルダの中のファイルのリストが見れる。
> cd mfapy
でmfapyフォルダに移動可能
> cd..
で一つ上のフォルダに移動

7. 仮想環境をmfapyを構築する。
> conda create -n mfapy python=3.6 numpy scipy matplotlib=2.1 joblib
質問されたら y でお返事

8. 仮想環境mfapyをactivateする。
> conda activate mfapy
(mfapy) C:\Users\FumioMatsuda>
環境名がmfapyになる。

9. 他のパッケージをインストールする(この順番が大事)
> conda install -c conda-forge nlopt
> conda install -c anaconda mkl-service 

10. mfapyをインストールする
現在参照しているフォルダをmfapyにする
(mfapy) C:\Users\FumioMatsuda\mfapy>
> python setup.py install

11. unittestを行う。
続いて
> python setup.py test
と入力、なにやらでてきてエラーなしでOKと出ればインストール成功

12 PyScripter をインストール
https://sourceforge.net/projects/pyscripter/
64bit (x64)用のv3.4.1以降をダウンロード
 /PyScripter-v3.4/PyScripter-v3.4.1-x64-Setup.exe
をデフォルトでインストール
3.4.1以降で仮想環境に対応した(えらい) 

13 PyScripter を起動、仮想環境を設定
メニューのRunの一番下から2番目Python Versions=>Setup Python
"+"ボタンを押し、
C:\Users\FumioMatsuda\Anaconda3\envs\mfapy
選ぶ。Unresigtered versionに
Python 3.6 (64bit) C:\Users\FumioMatsuda\Anaconda3\envs\mfapy
が追加されるので、選択して左上の歯車ボタン。緑の矢印で選択される。

14 動作のテスト

C:\Users\FumioMatsuda\mfapy\script\
にExampleがあるので、これがすべて動くかを確かめる。 
このファイルをもとに使い方を勉強する。

質問など

コードの追加、修正案、バグのレポートは松田まで。
 特にEMU構築のあたりが泥沼になっているので、リフォームが必要

Todo

  • スキャンデータからのMDV取得
  • バグがないかの確認