2015年4月17日金曜日

清水研雑誌会4/17


1人目はM1の森田君で Borodina et al. Establishing a synthetic pathway for high-level production of 3-hydroxypropionic acid in Saccharomyces cerevisiae via beta-alanine. Metab Eng. 2015 Mar 10;29:86-96. Metab Eng. 2015 Jan;27:57-64. doi: 10.1016/j.ymben.2014.10.003.です。3-ヒドロキシプロピオン酸 (3HP) はポリマー原料のアクリル酸に変換可能な有機酸です。これを微生物に生産させて培地中の3HPが増加すると、培地のpHが下がってしまい、微生物の元気がなくなってしまうという問題がありました。そこで、もともと低pHに強い出芽酵母に3HP生産能力を付与した、という論文です。まず酵母細胞内に構築する3HPの合成経路の吟味をしています。3HP合成経路は4つくらいあるのですが、フラックスバランス解析による代謝シミュレーションを行ない、通気条件などの比較検討から、beta-alanine経路が最も適していると結論しています。つぎに、実際に他生物種の酵素遺伝子を酵母に組み込んで、3HP合成経路を構築します。問題はどの酵素遺伝子を選ぶか?その酵素が酵母でも機能するのか?などの課題があります。タンパク質のin silico モデリングをつかって酵素を選んでます。あとは、さまざまな生物種由来の酵素遺伝子株を組み込んだ酵母株をたくさん作成して、発酵試験をでいいものを選び、最後はFed-batchでtiter13.7 g /Lを力業でたたき出すという流れでした。酵母の代謝工学の教科書みたいな仕事ですね。森田君の力業が炸裂するのが楽しみです。

2人目はD1の徳山君で Chiam et al. Rational design of a synthetic Entner-Doudoroff pathway for improved and controllable NADPH regeneration.Metab Eng. 2015 Mar 10;29:86-96. doi: 10.1016/j.ymben.2015.03.001.です。長鎖DNA断片を自在に合成できる時代になりました。おおよそどんな配列でも(お金がある限り)合成できます。本研究では大腸菌にZymomonas mobilis由来のEntner-Doudoroff経路を機能させることを目指し、zwf, pgi, edd, eda & pgi 遺伝子の配列を、コドン最適化、リボソーム停止配列の除去、5'UTR, 3'UTR配列の最適化を行なった EDオペロン (ED1.0) を設計、合成しています。もうゲノムDNAから遺伝子をPCRでクローニングしたりしません。次に、各遺伝子の翻訳効率をファインチューニングするために、翻訳開始点のRibosomal binding site (RBS)の配列をRBSライブラリものとランダムに取り替えた改変EDオペロンを387種作成し (MAGE法というかっこいい名前がついてます)、その効果をNADPH依存蛍光タンパクを用いてハイスループットに評価しています。おしゃれです。このオペロンをイソプレノイドNeurosporene生産株に組み込んで生産量がざっと2倍 (2 mg/g DCW => 4 mg/g DCW)になりました。この研究がすごいのはED1.0の設計までは人間技なんですが、残りは全部システム化されている(=自動化できる)点です。最初のオペロン設計、構築部分も原理的に自動化可能だとおもうので、zwf, pgi, edd, eda & pgi 遺伝子をオペロン化していいやつを選んでね、と自動化システムに指令すればあとはマシーンがやってくれる。かも、という時代のその先をがんばって切り開いていきましょう。B4にもわかりやすい発表でした。

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