2015年4月6日月曜日

ピーク形状の品質評価法

細胞内にふくまれる代謝物の定量には、液体クロマトグラフィー―質量分析装置 (LC-MS)などを用います。LC-MSを使うと、代謝物はクロマトグラム上のピークとして検出されます。ピークの面積と代謝物濃度が比例します。そこで、メタボローム分析では、多数のピークを自動的に検出して面積値のリストを出力してくれる便利なプログラムが大活躍します。が、小さいピークになるとノイズの影響を強く受けてしまい、がたがたしたジグザグのヘンな形のピークになってしまうことがあります。そういうピークの面積値はあまり信用ができません。しかし、プログラムが書き出した面積値のリストを見てもどのピークの形がジグザグなのかはわかりません。なので、どうしても確認したいときは、人間の目で確認する必要がありました。
Zhang et al. Quality evaluation of extracted ion chromatograms and chromatographic peaks in liquid chromatography/mass spectrometry-based metabolomics data. BMC Bioinformatics 2014, 15(Suppl 11):S5 はピーク形状を評価する新しい指標、その名も zigzag index を提案した論文です。きわめて簡単な方法(クロマトグラム上の隣接するポイントの距離を計算する)で計算したzigzag indexが、ガウス分布への適合度やS/N比などの従来法にくらべてピーク形状の品質評価指標として圧倒的に優れていることを示しています。
クロマトグラムの解析技術とは、スマートな理論が現実に敗北し続けた死屍累々の歴史でもあるわけですが、この zigzag index がいいところは、

  • そもそものきっかけが実務家の魂の叫びとも言うべきニーズから始まっている。
  • スマートな理屈抜きでかつ簡潔

な点です。かなり使えそうな印象です。実際のメタボロームデータを用いた検証がもう少し必要ですが、こういう技術がどんどん発展していくとうれしいですね。


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