2015年4月24日金曜日

清水研雑誌会 4/24

今日の雑誌会はD1の日浅さんでXiong et al. Integrated transcriptomic and proteomic analysis of the global response of Synechococcus sp. PCC7002 to high light stress.Mol Cell Proteomics. 2015 14(4):1038-53でした

光合成をする微生物に二酸化炭素から直接バイオ燃料やバイオプラスチックを作らせることができればとても有用です。どんどん光合成をしてCO2固定してもらうには、強い光をあててやると良いんですが、あまり光が強すぎると光合成が逆に阻害されてしまうという問題点もあります。Synechococcus sp. PCC7002という光合成微生物はもともと強光条件にすこし耐性があるといういい特性をもっていますが、強光耐性メカニズムがわかればもっとも強くする手法を見つけることができません。こういうとき、通常と強光条件での全遺伝子の発現量がわかれば、強光条件でのみ強く発現している遺伝子は、耐性に関係しているかもしれません。そこで本研究ではRNAseqという最新の手法で遺伝子発現量の比較を行なっています。しかし、遺伝子の発現量アップ=>翻訳産物のタンパク質アップとは必ずしもならない。といわれています(はっきりしたことはよくわかていません)。そこで、TMTというタグを使ったプロテオーム解析で、タンパク質発現量の網羅的な比較も行なっています。わかったことは、強光条件で多数の遺伝子とタンパク質の発現量が増減するが、その間に明確な相関がない。とか、アンテナタンパクが減るとか、光化学系I, IIのタンパク質もへるとか、逆にRuBisCOの発現量は増えるとか、DNA修復系があがるとか、さまざまななことがわかりましたす。また、遺伝子とタンパク質の発現量が同時に向上した遺伝子群のなかには、その遺伝子を欠損させると強光耐性が大きく低下するものがあることもみつかりました。網羅的な解析をすると、なんでもわかるわけではありませんが、なんとなく全体の雰囲気がわかる点が大きいです。さらに、そこからさまざまな仮説が生成できて、次の実験につながります。また、興味深い機能を持った新規遺伝子の発見にもつながる投げ縄ツールとしても便利です。研究開始時のとっかかりをつかむためのツールといえるでしょう。もちろん新規遺伝子の機能を予測するだけでは研究にならないので、遺伝学的、生化学的に実験して検証する必要はもちろんあります。今回の論文では欠損変異株で遺伝学的な機能解析をやっている点がえらいですね。

二人目はM1の野村君で、Zhang et al. A fast sensor for in vivo quantification of cytosolic phosphate in Saccharomyces cerevisiae.Biotechnol Bioeng. 2015 May;112(5):1033-46

です。酵母細胞内のリン酸濃度をはかる新技術です。マルトースを資化できない酵母株に、

  • Maltose phosphrylase: glucose + G1P = maltose + Pi, Keq1 = 4.5
  • beta-phosphoglucomutase: G6P = G1P, Keq2 = 0.053

の2反応を触媒する酵素を強発現し、これらの反応を化学平衡と見なせるようにします。
そうすると、glucose、G6P、maltoseの細胞内濃度から次式で
Pi = [glucose][G6P]/[maltose] * Keq1 * Keq2
リン酸濃度が測定できたようです。という報告です。さらに、glucose、G6P、maltoseが細胞質にしかないと仮定すると、細胞質中のPi濃度がはかれたことになります。本当に平衡になっているの?細胞質中のglucose、G6P、maltose濃度をどうやってしらべるの?などのつっこみどころはありますが、すごい萌え萌えの手法です。ふたりともチャレンジングな論文を上手に説明できていました。

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