2015年5月29日金曜日

清水研雑誌会5/29

今日の雑誌会の一人目はB4楢崎君で Lee et al. Engineering cellular redox balance in Saccharomyces cerevisiae for improved production of L-lactic acid. Biotechnol Bioeng 112, 751-758(2015)です。出芽酵母は発酵時のストレスに強い、菌体のリサイクルができる、扱いやすいなどの特性があるため、バイオエタノール生産の宿主として活用されています。こんな出芽酵母にエタノール以外の有用物質をエタノール並の高収率で作らせることができれば、イイ、ですよね。本論文では出芽酵母に乳酸を作らせています。まず、恒常的に高発現可能なプロモーターを選抜し、そのプロモーターでドライブしてPelodiscus sinensis (スッポン)由来のLDHの高発現を行なっています。さらに、競合する代謝経路の酵素遺伝子をURAブラスター法で破壊しつつ、そのサイトにプロモーター+LDHの断片を組み込んでいます。これをゲノム上の複数箇所で行なうことで、LDHの強発現を行ないました。ミトコンドリアのNADH脱水素酵素遺伝子 (NDE1, NDE2) を破壊しているところが渋いです。
二人目はB4の永井君で、Millard et al. Sampling of intracellular metabolites for stationary and non-stationary (13)C metabolic flux analysis in Escherichia coli.Anal Biochem 465, 38-49,(2014) でした。微生物細胞内の代謝がどうなっているのか調べたいわけです。そこで、菌体を培地から取り出して、培地成分を洗浄し、菌体内の代謝物を抽出して、分析装置で測定します。問題は、細胞内の代謝は変化が秒単位で早く起きるので、上記の操作中に代謝が変化してしまうようなんです。この論文では、さくっとフィルターで菌体をろ集するという方法はダメで、冷たいエタノールやグリセロール水溶液などにつけ込むのがよいと示しています。でも溶液につけこむと、代謝物が流れ出してしまってダメ、という説もあるんですよね。今回は13C代謝フラックス解析に限った話なので、代謝物が減る分には気にならないので大丈夫なんですが、難しいところです。二人とも堂々と発表していました。次回も楽しみです。


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