2015年5月3日日曜日

ノンターゲットメタボローム分析の課題その4 LC-MSを用いたデータの取得


LC-MSで取得したメタボロームデータ中の、Metabolite Featureは(保持時間x、質量電荷比y)座標上の位置として指し示すことができます。2つのメタボロームデータ間で比較すると、質量電荷比yはいつもほぼ同じ位置になりますが、それにくらべると、保持時間xはLCの設定から影響を受けやすいです。配管等のセットアップ、移動相の組成、カラム、温度、グラジエントカーブなどの影響を受けてしまうからです。したがって、複数のメタボロームデータの比較がしたいのであれば、カラム、分析メソッドを標準化する必要があります。あと、できればデッドボリューム、グラジエント遅れなどの一致させたいので、できれば同じメーカーの同じ機種を同じセットアップで使いたいです。それから、後述するように、イオン化の雰囲気、効率も一定でないと、強度値を比較できません。できれば質量分析装置も同じメーカーの同じ機種を同じセットアップがいいですよね。
保持時間がずれた状態、イオン化の雰囲気が変化した状態で取得したデータは、後のデータ解析において支障をきたします。また、サンプルの寿命を考えると、LC-MSを用いた分析は、数ヶ月後のやり直す。ということが難しいので、どうしても一発勝負にならざるを得ません。そうなると、きちんとデータがとれたことを確認しながら進めていく必要があるでしょう。分析開始前と終了後に分析メソッドが正常に動作していることを確認する方法を作る必要があります。QCサンプルを分析しKnown-unknownおよびKnown-knownなMetabolite Feature 20個程度について、保持時間x、質量電荷比y、強度値補正用内部標準物質(後述)のシグナルとの強度比、ピークの半値幅が許容値以内にある。とか、個々のデータをその場でPLSモデルに投げて、外れ値にならないなどなどの基準を作成する必要があります。さらに、この確認法も標準化しないと、他所のデータって使いにくいですよね。
そうなると、たとえはある研究所で、LC-MS装置を新規導入したとき、その装置から出たデータは今までのものと比較可能なのか?また、別の研究所で、メタボローム分析を立ち上げたとき、もとの研究所と比較可能なデータが出るのか?を確かめる必要があります。分析法全体のバリデーションを行う必要があるんですけど、ノンターゲット分析のバリデーション法と、バリデーションの範囲ってどう決めればいいんでしょうか?おそらく、室間再現性をとるためのバリデーションなので、拠点研究室と新規研究室で同一のサンプルを同一メソッドで分析し、同一のデータ処理を行って、同じ結果が出るか確認するクロスバリデーションをすることになると思います。近年メタボロミクスのバリデーション法も議論が始まっているので (J. Chromatogr. A (2014) 1353, 99-105)議論の進展に注目が必要です。分析サンプルおよびLC-MS分析で得られたデータファイル、および必要なメタ情報がLIMSで管理されていることが大前提です。メタ情報の標準化も必要になるでしょう。ここの部分だけはメタボローム業界がちょっとだけ仕事をしているので、うまく使えるといいですね。

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