2015年5月8日金曜日

清水研雑誌会5/8

今日の雑誌会の1人目はM1前田君で、Crown et al. Integrated 13C-metabolic flux analysis of 14 parallel labeling experiments in Escherichia coli.Metab Eng. 2015 28:151-8.です。細胞内の中枢代謝経路の流れ(代謝フラックス)を測定する手法の一つに13C代謝フラックス解析があります。清水研では、13C代謝フラックス解析の技術開発を精力的に進めています。世界で13C代謝フラックス解析法をリードする研究者の1人がこの論文の著者であるUniversity of DelawareのMaciek R. Antoniewiczです。彼は13C代謝フラックス解析法を一気にモダンに進化させた人で、その成果を我々が開発してる解析ソフトウェアにも取り入れています。
13C代謝フラックス解析では、13Cラベルグルコースを炭素源として微生物を培養し、細胞内代謝物のラベルパターンの計測値から細胞内代謝フラックス分布を推定します(詳細は後日本ブログでも解説する予定です)。13Cラベルグルコースとして[1-13C]グルコースとか[U-13C]グルコースと[1-13C]グルコースの混合物などを用います。他にも[1,2-13C]グルコースとか、選択肢は多いです。しかし、使用する13Cラベルグルコースによって、代謝フラックスの推定精度が反応毎に異なることもわかっていたのですが、じゃあどれを選ぶのがいいのかはよくわかっていません。本論文では、14通りの13Cラベルグルコースを用いて、同一条件での13C代謝フラックス解析を行い、結果を比較しています。その結果はオールマイティーなものはない。とのことです。そこで、14通りのデータを全部まとめて解析すると(パラレルラベリング)、一番精度があがることを示しています。さすがに14通りのパラレルラベリングは大変ですが、2-3通りで実施するのは現実的ですよね。
13C代謝フラックス解析では、実験を始める前に13Cラベルグルコースの選択など予備検討が大事です。そのためのソフトウェアを前田インティライミ君がばりばり作って解析しています。その成果を次回の質量分析討論会で公表予定ですので乞うご期待!です。
2人目はM1増田さんでGuzman et al.Model-driven discovery of underground metabolic functions in Escherichia coli. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 Jan 20;112(3):929-34.です。代謝反応は酵素が触媒します。酵素は利用する基質を厳密に認識したり、あいまいに認識していたりします。代謝シミュレーションに用いる代謝モデルは既知の基質/酵素関係の情報を元に作成されていますが、基質をあいまいに認識する酵素が、既知の基質”以外”を利用するならば、代謝シミュレーションの予測結果が現実には合わないことになります。
この論文では、代謝シミュレーションの結果が実験データと合わない場合に注目し、うまく実験を行なうことで、基質の認識があいまいな酵素を探すことに成功しています。モデルを用いた計算機シミュレーションと実際に実験を組み合わせたかしこい研究です。ふたりともとても発表が上手でした。

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