2015年6月5日金曜日

清水研雑誌会6/5

本日の雑誌会の一人目はB4の後野君で Binder et al. A high-throughput approach to identify genomic variants of bacterial metabolite producers at the single-cell level. Genome Biology 2012, 13:R40 です。有用物質を効率的に生産する微生物を作り出すには、設計図を書き、ねらいを定めて合理的に作るアプローチと、ゲノムへランダムに変異を導入し、そのなかからいいものを選ぶ。という二つのアプローチがあります。前者(若紫系)はねらい通りに行けばすごいのですが、ねらいをはずすと大変なうえ、ねらい以外の思いがけない大当たりにぶつかることができません。後者(ナンパ系)は思わぬ大当たりを拾える可能性が高いのですが、大当たりを拾うには、微生物1細胞ごとの生産能力を評価する大変な手間がかかります。そこで、微生物細胞内の目的物質濃度が高くなると、蛍光を発するようなセンサーを微生物に組み込んでおけばいいじゃん。というアイデアを形にしたのがこの論文です。細胞内リジン濃度が高くなると蛍光タンパクを発現するようにしたプラスミドをコリネ菌に形質転換します。この株にランダムに変異を導入した細胞集団から、リジン高生産変異体を蛍光強度を指標としてセルソーターで選び出し、既知以外の変異を持つ株のリシーケンスを行なって、新規の有用変異を見つけ出しています。質疑応答ではリジンセンサーのメカニズムの詳細と、この新しい変異は既知ものと比べてどうなの?等が出ました。
二人目はB4の渡辺君で Xu et al. Improving fatty acids production by engineering dynamic pathway regulation and metabolic control. PNAS  2014 111(31):11299-304. です。代謝中間体の細胞内濃度を検出して、細胞内濃度が低いときは上流の反応をOF,下流をOFF,濃度が高いときは上流の反応をOFF,下流をONにできれば効率が良さそう、ですよね。そこで、脂肪酸生合成の鍵中間体のマロニルCoAのセンサーとなるにfapRという転写因子をもちいた回路を作成しています。これがうまくいって脂肪酸生産量が3倍くらい向上しています。さらに、細胞内マロニル酸濃度が時間的に増減、すなわち振動する。といっています。しかし、なんでうまく動くんでしょう?質問ではD2岡橋くんから、マロニルCoAのセンサーがONになると、酵素タンパクの発現量があがる。というのはわかるけど、高かった発現量が下がるって何が起きているの?というナイスな質問がありました。さすがです。また、振動するかしないかは3回生でならった制御理論でわかるはずという指摘もありました。発表者は二人とも落ち着いたイケメン感あふれるプレゼンで安心して聞けました。


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